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何のためにある?日本大使館

カヌーイスト・野田知佑氏の著書『新・放浪記1 旅へ』文春文庫から、



(ギリシア)
 テッサロニキのYMCAに泊まっていた時、同室のカナダの青年が車にはねられた。
ひき逃げで、両足骨折。2,3ヵ月は入院だという。ヒッチハイクで貧乏旅行をしていた若者にそんな金がある訳がない。彼は蒼くなっていた。こんな時に頼るのは大使館だ。
 彼の頼みでアテネのカナダ大使館に電話を入れ、事情を話した。
翌日、やって来た係官の態度がなかなか良かった。少しもお役人くさくないのだ。
彼は入院の諸手続きをてきぱきと済ますと、青年の寝ているベッドに行きこういったのだ。
「少し金を置いていくよ。返せる時に返せばいい」
 そして、数百ドルの紙幣を青年の枕の下に押しこんだ。一緒に帰る途中、ぼくはこの外交官にきいた。
「あの金は政府支給のものですか?」
「いや、ぼくのポケットマネーだ」
 ぼくが感心して黙っていると男はビールはどうだ、と路上のカフェにぼくをさそった。
 男は終戦後、日本に軍属として居たことがある、といった。あの頃の日本人はみな飢えていて死にそうになっていた。それにしてもよく立ち直ったもんだ。ところで、日本の学生運動はどうなっているんだ。そんな話をした。日本では「慶大闘争」を発端として全国にその火が広がりつつあった。
「ぼくも若い時に外国を貧乏旅行して回ったことがある。あの頃が懐かしいよ、今、ぼくはたいていのものは持っているが若さと自由だけはない。昔は良かったな。お金がなくいつも腹を空かせていたけど・・・・」
 金なんてあとでいくらでも返すことができる。時間は借りられない。借りかれるものはどんどん借りればいいのだ。
 初老のその男はそういった。
 こんな官僚を持つカナダは良い国だと思った。
後日、ぼくはヨーロッパのある国の日本大使館で応対に出た係官が無礼なので殴ってしまった。
その時、大切な用件で大使館に行ったのだがそいつは初めからぼくの身なりを見て侮辱の表情を隠そうともしなかった。
 ある種の人間はネクタイにスーツという格好をしていない人間を「薄汚れた」という風に見る。どんなに清潔なシャツやズボンを着ていようが「ネクタイ」をしていない人間は彼等にとって「汚い連中」なのだ。
 その係官はこんなことをいった。
「そんな薄汚いなりで外国をうろうろするのは日本国の恥だ。いったい昼間から若い者がうろうろしていること自体けしからん。マジメになって定職に就いたらどうか」
 そしてぼくを犬のようにシッシッと追い払う手つきをしたのだ。
「この役立たずの月給泥棒め。貴様は小便をしても糞をしても金を貰えるが、俺は100%自前で生きている。自立している俺の方がエライのだ。同国人にはもちっと敬意を払え。この木っ端役人め!」
 といった立派なタンカを切れれば腕力を使う必要がないのだ。うまい言葉が全然口から出ないので手が出るのである。ぼくはその係官のネクタイを摑んでカウンター越しに引きずり出し、張り倒した。大きなガードマンが二人とんできて、ぼくをゴミのように外へつまみ出された。日本はぼくにとって最も相容れない「異郷の国」であった。




野田氏の旅行記は、1965年の体験記であるが、上記のような外務省の体質は、今も変わらないと思う。
私も、野田氏と同じような事例を何度か体験している。
野田氏は、「薄汚いなりで」、「ネクタイをしていない」ものを最初から係官が侮蔑しているという表現をしているが、もともと、日本大使館は、肩書きのない個人旅行者を鼻から相手にする気はない。
ましてや、無銭旅行者や、放浪者、バックパッカーなどというモノは、日本のパスポートを持っていようとも、「自分たちとは身分も違うし、自分たちに迷惑をかける存在以外のものではない」と考えている。考えているというのは、受け手であるこちらに、そうとしか、思えない落胆を抱かせてくれるからだ。


 ある国で、私はパスポートを失くした。
落胆している私の姿をみて、宿の主人が、
「心配するな。自分は、日本大使館の人を知っている。今から電話してあげるから」
と親切に励ましてくれた。
その気持ちだけで嬉しかったが、その宿の主人は、本当に知合いの大使館職員に電話してくれた。
主人が少し、話したあと、ハイ、と電話を私に回した。
「もしもし、・・・」と私は言うと、いきなり、
「パスポートを失くしたっていうのは、おまえか!休みの日に電話なんかかけさせるな!かけるんだったら、人に頼まずに、自分で電話しろ!」と怒鳴られてしまった。
「・・・・・宿の主人が、わざわざ・・知り合いだというもので・・・」
「知り合いでもなんでもない!たった、一回会った事があるというだけだ!」
私の前で、心配そうに私をみつめている宿の主人の顔がちらつく。
「・・・・・もう、あなたには頼みません!」
と言って、私は、電話を切った。
こんな奴に頼むぐらいなら、密出国、密入国でもしたほうがいいと思った。
私の前で、「大丈夫だったか?」と聞いてくる宿の主人の顔をみていると、本当のことが言えず、
「ああ、本当に助かった!あなたのおかげで、うまく行きそうだ!ありがとう!」
後々、電話で話した大使館の横柄な係員は、大使そのもの!だったことがわかった。


こんなこともあった。
またまた、パスポートを失くした。
パスポートを失くしたというより、持っているものを全て失くしたと言ったほうがいいかもしれない。
そう、全てを盗まれ、唯一持っているものは、自分の身に付けていた、数枚の現地紙幣とコインだけだった。
このときもガックリと落ち込んだ。
そして、まず、考えたことは、お金をどうにかしないといけないということだ。
ポケットに入っているお金で、日本に連絡し、どうにか当座の資金を送金してもらおう!
ただ、このremittance(送金)をするのにも、パスポートナンバーが分からないと、その受取は不可能である。
パスポートの再発給申請(2005年再発給制度廃止)を日本大使館に依頼するにしても、お金がかかる。とにかく、日本大使館へ行って、相談してみよう。できたら、後払いで了承してもらえれば、助かる。
ここは、大都市であったので、日本大使館も大きかった。
私は、どうにか、窓口までたどり着き、相談の旨を伝えた。
数分後、窓口に忙しそうに登場した男性係員は、無表情に私の一連の話を聞いた後、一言こうつぶやいた。
「それで、あなたは、日本人ですか?」
「・・・・・・」
「あなたは、日本人ですか?」
「ハア?」
相手が何を聞いているのかわからなかった。私が、日本人であることを前提にすべてお話してきたのだから。
「あなたは、日本人ですかって聞いているんです!」
とそのうち怒り出す。
「ええ、もちろん、日本人です。そのパスポートを紛失したので、こうやって手続きをお願いしにきているんです・・・・」
「それでは、証拠をみせてください!」
「証拠?・・・・なんの証拠ですか?」
「日本人である、証拠です」
「・・・・・・日本語・・・も喋りますし・・・日本の住所、本籍も言えますし・・・・・日本へ連絡していただければわかると・・・・・・・」
「そんな証拠ではありません!そんなことは、誰でも言えます!ちゃんとした証拠をみせてください!」
「・・・・しかし、私は、すべて盗まれてしまって、・・・」
「それなら、証拠を見つけてから、来て下さい!」
といわれて、そのまま、窓口をピシャッ!と閉められて二度と開くことはなかった。
怒りというより、もう涙が出そうであった。


 
 インドの安宿街などへ行くと、日本語と英語で書かれた紙切れがゲストハウスの掲示板に張り出されているのをよく目にする。
そこには、Missing Person という文字と一緒に、顔写真が載せられている。最後のほうには、連絡先として、日本の住所や電話番号もある。
男性の写真、女性の写真、夫婦の写真。
つまり、この地方を旅行中、行方不明になった日本人旅行者。
その日本のご家族、友人が、一生懸命手書きでポスターを作って、自腹で現地まで来て、あちこちにポスターを貼らさせてもらっているのだ。
こういう行方不明者は、実は世界中にいる。
行方不明者のご家族は、当然、最初は日本の公の機関にお願いして、状況を確認するだろう。
その際、誠意の無い対応とともに、入ってくる情報もほとんどないことにシビレを切らして、自ら、現地に赴いて行動を起こす。それ以外、もう息子や娘を捜す方法はない。
ポスターには、両親などの必死さが、紙面ににじみ出ている。


添乗員として、日本大使館と話す機会がある。
特に、JTBなど大手旅行会社の看板を背負って、日本大使館へパスポートの発給を依頼したときなど、ほとんどが予定より早く受領できたりする。応対もとても丁寧だったりして、個人の時とでは、別人のような振舞いである。
また、大手日本企業のオーガナイズツアーでは、大手企業の社長のほうが、日本大使より偉いのか!と思わせる場面に何度も出会う。
「日本大使館」というのは、日本企業とくに経団連の出張所なのか!というのが、率直な印象なのである。

そう考えていくと、個人旅行者に対する日本大使館の振る舞いも納得が行くのである。

パスポートの1ページに記載されている『所持人を通路故障なく旅行させ、かつ、同人に必要な保護扶助を与えられるよう関係の所管に要請する・・・日本国外務大臣』という文言に、是非、次の一文を追加してほしいと思う。
*附帯事項:所持人とは、大手企業などに従事する者、またはその家族、公務に従事する者、それに準ずる者が、その肩書きを宣誓した場合のみ保障されるものである。


上記、野田氏の旅行記では、カナダ大使館員の対応が書かれている。
あのような対応は、カナダ大使館員に限られたことではない。
欧米のほとんどの大使館が、同じような意識を持っている。
アメリカ大使館でもイギリス大使館でもフランス大使館でもの同じである。
彼らは、自分たちの役割というのをよく分かっているんだと思う。
ます、困っている自国人がいれば、理由は問わず、できるかぎりの対応をする。
自己責任などとは、絶対にいわないだろう。なぜなら、それを決めるのは自分たちではないからだ。
自分たちは、自分たちの役割(責任)を果たすだけなのだ。
しかも、その役割にも常に包容性があったりする。たとえば、自国以外の人、日本人が、困って助けを求めれば、アメリカ大使館もフランス大使館も必ず良き対応をしてくれるだろう。


それに比べて、日本大使館はどうだろう。
個人のために、ほとんど動かなかった日本大使館が、イラクの人質事件のときは、目まぐるしく動き回っていた。自己責任という流行語をはやらせながら、それでも、大切な日本国民のために寝る間も惜しんで頑張ってますよ~!ということをさんざんアピールしていた。
今から考えても、あれは何だったんだろう?
もうお分かりのように、人道的にあんなことをする組織ではないはず。

イランで誘拐された大学生・中村氏(2007年)のときも結構なパフォーマンスをおこなっていた。
上記インドのMissing Personでもお分かりのように、中村氏のような日本人は、過去にもたくさんいたはずだが、まずニュースとなることはなかったし、外務省が真摯に取り組んでいる風でもなかった。


正直いって、私は、外務省なんて必要ないと思っている。
このパフォーマンス軍団は、私のようにパスポートを取られてどん底にいる日本人をさらに奥へ押し込むようなことばかりしているのだ。
経済界の出張所のようなことばかりしているのなら、JETROや経団連の海外出張所で十分だろう。
国際友好的な業務なら、NPOの団体のほうが、何百倍も有益である。

****つづき

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