Home *  * All archives

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
tb: -- |  cm: --
go page top

《知らない》と答えるコンダクターは軽蔑され、客に不安を与える?


ツアコンのアルバイトをする梨元さん。
「楽しかった・・・」などと言っているが、今の学生なら『ブラックバイト』と訴ったえるだろう!



楽しかったツアコンのアルバイト

数々のアルバイトの中で、私の興昧を惹き付けたのは『ツアーコンダクター』(ツアコン)、すなわち旅行のガイドさん(添乗員)の仕事だった。ツアコンは、西に飛んだり東に飛んだりするのが仕事だから、行動的な私にはピッタリだったのだろう。おまけに目立ちたがり屋の私は、旗など持ってツアー客を案内したり、説明したりするのが好きだったのであろう。加えて、人間に興昧津々の私は、毎回変わるツアー客に出会うのも楽しみだった。《今度はどんな団体さんかな?》などと考えるとワクワクしたものである。
確かにツアコンは気苦労が多い仕事ではある。バラバラに参加してくる客は、結構わがまま言い放題みたいなところがある。あれが足りないとか、このサービスをしろとか、バスの旅行などではトイレに行きたいから臨時に停車しろという客もいた。休憩や自由行動のときなどには、時間どおりに戻ってこない客もある。
「時にはーそれはないよ」というような、無理難題をツアコンに言ってくる場合もある。そういうときに、真っ正面から向き合って、その場その場で臨機応変に処理していくわけだ。巧く処理して、お客さんに感謝されたりすると、こちらとしてもさらにやりがいが出てくる。
ツアーコンダクターの心得一は、お客さんを不安にさせないことだと先輩に叩き込まれた。

北海道に添乗したことがある。
[梨元、北海道は行ったことがあるか?」と先輩に訊かれた。
「ありません。大いに楽しみです。見るもの聞くものみんな初めてですから、勉強になります。お客さんと一緒に楽しんできま~す」
私は少々ハイになっており、軽薄な調子で先輩に答えた。
「それじゃ困るんだな……」先輩は苦笑した。
[こっちは仕事。お客様に楽しんでもらうんです」
慌てて、私は弁解した。
「北海道が初めてだなんて言ったら困るんだ……。ツアコンというのは、万能じゃなければならないんだ。北海道が初めてだなんていうコンダクターに安心して旅のガイドを任せられると思うか?客の身になったらそうだろうが……。梨元……。絶対学生アルバイトだという顔をしてはいけない。お前は何百回も北海道に来ているベテランコンダクターという顔をしていろ。わかったな」と先董は固く念を押した。

確かに、そういうものかもしれない。
「大いに勉強になります」と、私は素直にうなずいた。その私に先輩はさらに付け加えた。「仮に汽車などで、どちらの側に大雪山が見えますか?ってなことを訊かれたら、たとえ知らなくても悠然と構えて、右側か左側か答えておけ。ゆめゆめ、知らないとか、初めてなもんでわかりません、なんて言ってはいかん。《知らない》と答えるコンダクターは軽蔑され、客に不安を与える。ところが、間違った答えに対しては、客はあまり気にしないものだ。梨元さん慌て者ね。大雪山はこっち側じゃないのよと言われて、それでチョンだ」
なるほどと思った。人生奥が深いと思ったものだ。

ある旅行で部屋割りをしたのだが、それが大失敗だった。私の早とちりで、ある夫婦が離れ離れになってしまった。部屋だけの間違いならともかく、夫婦別々の旅館になってしまったのだ。奥さんから電話があって初めてわかった。
私としても一言もない。せっかくの夫婦水入らずの旅行なのに、部屋どころか、旅館まで別々になってしまったのだ。客が怒るのも無理がない。私は慌てて旦那の旅館に飛んでいって旦那に平身低頭した。
「何も、そんなに謝らなくてもいいよ。私はあなたが、せめて、一晩くらい女房と別々に寝せてあげようという粋な計らいをしてくれたのかと、感謝していたくらいなんですよ。でもやっぱり、女房のところに戻らなければなりませんかな……」
旦那は笑いを浮かべて首を振った。そう言えば、私がお詫びに駆け付けたときは、旦那は、思いがけずに同室になった男性と、大きな笑い声などをあげて、伸び伸びとくつろいでいた。奥さんのところに戻るという私の話で、シュンとしょげてしまった。
この結果がどうなったか古い話なので記憶も薄れたが、夫婦の機微というか、人間とは面白いものだと、自分の失敗を棚に上げて、他人事のように感心したことを覚えている。
私は、人間に対して好奇心があり、目立ちたがり屋で、行動的なのだから、まさにツアーコンダクターという仕事は向いているような気がした。
私が出入りしていた旅行会社の営業所長には随分と目を掛けてもらった。その営業所長にも熱心に入社するように勧誘された。
[君はこの仕事が向いているな。大学を卒業したら本格的にウチの会社に勤める気はないか」
[考えさせてください」私は心が動いた。
しかし、その会社は日本屈指の旅行会社で、全国から優秀な人材が集まってくる。
相談すると、友人たちは「試験はそんなに簡単に受からないぞ」と脅かされた。
ざっくばらんに営業所長にそのことを言うと、営業所長は知恵を授けてくれた。
「ウチの社には地方採用というのがあって、地方の営業所なら面接で採否が決められる。地方で二年くらい勤めたら、本社に引っ張ることができる」
私に目を掛けてくれた所長はやり手の本社のエリート幹部だった。この所長は「俺が本社に引っ張ってやる」と励ましてくれた。
地方の営業所ということなら大宮の営業所だ。地元だし通勤にも便利だ。
「大宮の営業所に君を採用するように。ブッシュしておこう」とまで言ってくれた。
しかし、私には何かためらうものがあった。
アルバイトのないときは、友人宅か雀荘で麻雀に明け暮れていた。大学に入ったとはいうものの『学士』と呼ぶには、あまりにも学問とかけ離れていた。私がこのまま旅行代理店に入ってしまえば、大学卒というには、あまりにお粗末ではないかという、惟促たる思いが湧き上がってくるのであった。それが、旅行会社へ素直に飛び込んでいけない、ためらいとなっていた。


約半世紀前、梨元さんがツアコンとして経験したことは、今も変わらずほとんどの添乗員が経験していることだろう。
ツアーそのものは進化した。
文明の利器を使い昔とは比べようもないくらい情報収集が可能となり、予約・確認がアッという間にしかも正確にできるようになった。
それにもかかわらず、お客様とのトラブルは以前のままだ!
いや、以前より凶暴なモンスターも現れる!!

そして、梨元さんの時代と一番大きな違いは、添乗員にとってモンスターは背後にもいるということだ。
旅行会社という!




tb: 0 |  cm: 0
go page top

この記事に対するコメント

go page top

コメントの投稿

go page top

トラックバック

トラックバックURL
→http://intouch.blog56.fc2.com/tb.php/873-506034f8
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
go page top

新着記事+関連エントリー

カレンダー

カテゴリ

最新コメント

プロフィール

ブログ翻訳

旅行業の本

添乗に役立つ本

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。