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TPPと観光

 2010年、突然テレビなどマスコミで取り上げられたTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)。
 あれはとても不思議な現象だった・・・・今までニュースで耳にしたこともないTPPという用語を政治家が絶叫したかと思ったら、テレビでも新聞でも間を挟まず絶賛し、経団連も同時にそれを後押ししていた。

 どこかで誰かが筋書きを書き、それぞれに振付けを依頼したとしかおもえない展開が、1ヵ月後の横浜APEC(アジア太平洋経済協力)の参加表明まで続いた。

 TPPとは、経済の自由化構想である。それも多角的な自由化ということで、WTO(世界貿易機関)やEPA/FTA(経済連携協定/自由貿易協定)以上に多方面にわたり高いハードルが設定されているらしい。つまり自国の少しの言い分もこの協定の決定のなかでは通じない可能性があるらしい。

 『TPP亡国論』で著者の中野剛志氏は述べているが、現在TPPに参加を表明している国々はほとんどが小国・輸出型の国で内需が見込まれるのはアメリカのみである。そのアメリカへ日本が輸出できる商品もほとんどがもうすでに関税が低く抑えられているか、現地生産しているとのことだ。しかも、アメリカはリーマンショック以降、大々的に消費大国から輸出大国になることを宣言している。
 つまり、このTPPはほとんど日米のFTAに近く、アメリカの戦略は特に日本の保守的な農業市場の争奪にあるという。農業だけは現地生産というわけにはいかないので、自国の雇用を拡大することが可能なのだ。
 たしかに今、野菜などの価格はほんとうに高い。こんななか円高に誘導された外国産野菜などが無税や障壁なしで日本へ入ってきたら日本の生産者は廃業するしかないだろう。努力しだいでどうにかなるという問題ではない。
 旅行も同じだが、どんなに優良な作物を作ろうが、格安商品には勝てるものではない。
 デフレのなかではお互いが得をするという互換関係は成り立たないらしい。弱い立場のものがより窮地に立たされる政策こそ官僚や経団連やマスコミがやろうとしている自分たちだけ生き残るための経済成長ということになるようだ。

 観光業においてTPP問題はほとんど素通りである。
 それは、この業種が関税などかかる産品とは無関係なサービスというものを扱っているからに違いない。貿易自由化という言葉は、この業種のどこからも聞こえてはこない。
 ただ、そう安心してばかりはいられないだろう。TPPとは、多角的な自由化を目指しており、サービス分野においても今後タブーなしで何かしら要求されてくるにちがいない。

 そういう兆しの一つとして外国(アメリカ)に本社を置くグローバル旅行会社の問題がありやしないか。
 たとえば、ウェブやテレビでもおなじみの「エクスペディア」というアメリカ・ワシントン州に本社を置く旅行会社。
 『TPP亡国論』で著者の中野剛志氏は、TPPとはアメリカが日本をターゲットにした輸出倍増の国家戦略だと言い切っている。その意味で、日本人がアメリカの農作物やGM車を消費するのと同様に考えられるのは、日本人がアメリカ産の旅行商品を消費することである。
 アメリカ産の旅行会社「エクスペディア」は今盛んに日本の多数のメディアを使って自社のプロモートをおこなっている。もちろん、日本に支社があるわけではない。日本の旅行業の資格を取得しているわけでもない。とうぜん日本の旅行業法や旅行業約款を遵守する必要はない。
 その経営スタイルは、「アマゾン」と似ている。
 *アマゾン 脱税140億円 日本にも本社機能
 アマゾンは日本には倉庫のみ本社機能はアメリカにあった。だから日本で法人税を払っていなかった。そのことを日本の国税局は違法と判断し脱税として追徴課税をおこなった。最終的に、アメリカ政府が乗り出し日米租税条約をたてに日本の主張を退ける形で決着が図られた。つまり、日本国税局は全額アマゾンへ返却させらえれたのだった。

 アマゾンの例をみるかぎり、「エクスペディア」も日本で法人税を払ってないだろう。
 アマゾン同様、表示価格が日本円になっていようとも、すべての決算はアメリカで行なわれているらしい。
 アマゾンという前例があるだけにエクスペディアも堂々と商売できるのかもしれない。ただ、国税局が動くということはかなりの確信を持ってのことだろう。日米租税条約だって理解したうえでアマゾンを脱税と認定したはずだ。じつは政治力で簡単に右にでも左にでも転ぶ事柄なのではないだろうか。 

 「エクスペディア」のホームページを見れば誰もがわかるように、この会社は「ダイナミック海外ツアー」という日本の「募集型企画旅行」を販売している。通常日本の旅行会社なら、旅行業第1種の資格が必要である。それ相当の営業保証金や旅行業務取扱管理者の選任や旅行業約款の遵守も求められる。もちろん日本での納税義務がある。
 現時点ではこのようなグローバル企業は合法ということになってしまったが、いつ査察が入るかわからないはずだ。考えようによったら、関税なしで持ち込んだ商品を日本の消費者に安値で販売しその売上げを日本を素通りしてまるまるアメリカへもっていっちゃったようなものだから(アメリカで法人税を払っている)。
 もちろん、日本にある「エクスペディア」のカスタマーサービスは、アマゾン同様に「恒久的施設」扱いにはならないのだろう、だから、日米租税条約違反には当たらないということなのだろうが、今のままでは戦略的に万全とはいかないだろう。ヨーロッパあたりでもこういう商売は大きな問題となってきている。今のうちにTPPという不平等条約を日本と結ぶことができれば、『貿易自由化』という錦の御旗のもとに堂々と商売できるのかもしれない。

 今後、旅行業の取扱条件をアメリカンスタンダードへ統一させることによって、外国企業でも日本の旅行業の敷居をくぐりやすくさせる。そしてカスタマーセンターなどのメンテナンスサービスの事務所を日本に構えようと決算部門がそこになければ法人税をその国で支払う必要はないということが明確化される。
 このような志向にそって考えれば、エクスペディアの社長が以下のように発言した真意を理解できる。
 *日経BP「エクスペディアは日本人の旅行予約方法を変えるか?ワールドワイド新プレジデント スコット・ダーチスラグ氏に聞く」2011年03月09日
 《・・・・・・・・・・・
 今後の目標としては、「日本においては海外旅行だけではなく、国内旅行の展開も考えている。ウェブを見ることができるすべてのデバイスで、エクスペディアのオンライン予約ができるようにしたい。リアルタイムで、どこにいてもサービスが提供でき、高品質な選択肢を与えられ、価格面でも最大限にセーブできるようにする…先は長いながらも、日本市場におけるオンライン旅行数の向上のためにも、まずはどれほどエクスペディアがよいものか、実感してもらいたい」とした。・・・・・・・・・・》

  日本においては海外旅行だけではなく、国内旅行の展開も考えている・・・・と言っている。
 真意はともかく、貿易自由化とはこういうこともできるということではないか?日本人向けに国内旅行を販売する。日本人に「ダイナミック国内ツアー」を販売する。もちろん、決算はアメリカ本国だろう。日本の旅行会社はきっと、外国企業に日本の口うるさい顧客は扱えないとたかをくくっているかもしれない。手厚い人的サービスはこちらのほうが得意だ、と思っているかもしれない。たぶんその通りだと私も思う。ただ、そうなると、人的サービス対利便性、ということになるかもしれない。アマゾンのカスタマーサービスがどんなに酷くても結局アマゾンに注文してしまう人が多い。人的サービスは固定価格ではない。底なしである。良心的な会社は、廃業するか、人的サービスを斬って利便性を追求するしかないのではないか。
 つまり、こういう外国企業が参入してくるということは、農業分野と同じく、果てしない価格競争になるということではないか?
 結局、小泉・竹中路線、いまでは元経産省の古賀氏あたりが言っている構造改革のように、小さい企業は去れ!そうすれば大手に大きな需要が生まれ小さな企業の退職者を雇用できる、という弱肉強食の社会へより改悪されるのであろう。

 もうひとつ、人的サービスといえば、2010年11月8日、経団連の米倉弘昌会長が記者会見で「日本に忠誠を誓う外国からの移住者をどんどん奨励すべきだ」と述べ、TPPへの参加とそれに伴う海外からの労働者の積極受け入れを支持する発言をしていたらしい。
 日本に忠誠を誓う? どうやって判断するんだろう?いつの時代の話をしてんだろう?日本人でもない外国人に「忠誠」という言葉を持ち出すこの会長の人格を疑ってしまう。外国人が日本へ来るとしたら、そのことが自分もしくは家族のメリットになるからだろう。それ以外の理由は何が考えられるというのだ・・「日本が好き!」これほど移ろいやすい理由はないのではないか?
 米倉会長はこのような高飛車な発言をしたが、実際、日本へ来てくれるような外国人労働者はいるのだろうか?TPP参加国をみてみると、労働者として来てくれそうな国はあまりないではないか?ベトナム、マレーシア、ペルーあたりか・・・・
 唯でさえ失業率の高い国が外国人労働者を受け入れる。
 今のままではもちろん、賃金がどんどん下降していくということではないか。そして、観光分野はそういう安い労働者を受け入れる大きな市場になっていくことだろう。すでにヨーロッパではいろんな場所で移民や外国人労働者と出会う。ホテル、旅館、レストラン、お土産や、売店、ドライバー、ガイド、添乗員・・・・彼らにできない仕事ではない。外国人労働者を利用することでコストが抑えられるのであれば観光業は彼らを雇用するだろう!
 
 ただ彼らを雇用するためには日本の観光業が最低限の繁栄することが条件であろう。その最低限の繁栄の可能性として考えれれるのは、やはり、インバウンド(訪日)分野しかないのではなかろうか。
 そして、そうであるならば、インバウンドの多数を占める中国、韓国、台湾との互恵関係を最優先で考えなければならないということではないか。
 これらの国々は今後とも、インバウンドという旅行の一分野にとどまらず、日本全体の問題として重要な国々となるはずであるが、残念ながら、これらの国々はTPP参加する意思はなさそうだ。それ以上に日本がTPPに参加表明したことでこれらの国々を刺激したということはないのだろうか?

 このような状態だから、2010年9月の「尖閣諸島中国漁船衝突事件」みたいな両国間に問題が発生すればすぐさま下記のような対応でインバウンドへ影響が出てしまう。

日本観光の宣伝自粛を要請=漁船衝突が影響―北京市September 22 [Wed], 2010, 20:01

 【北京時事】北京市の観光当局が、日本への旅行を扱う業者に対し、募集や広告を自粛するよう要請したことが22日、分かった。尖閣諸島(中国名・釣魚島)沖の漁船衝突事件で逮捕された中国人船長の拘置延長への対抗措置とみられる。
 業界関係者によると、当局は21日午後、募集を積極的に行わないよう口頭で説明。ただ、通知文書などは一切なく、当局側の抑制的な対応が目立ったという。


 結局、日本のTPP参加によって、せっかく日本にやってきた中国人や韓国人や台湾人の消費をアメリカの多国籍企業にかすめとられて終わりになるかもしれない。

 ならば、TPPなんかより、中国や韓国が参加する『東アジア共同体』のほうを推進したらよいのではないか。TPPよりこちらのほうが断然有意義な気がするが・・・・。リーダーシップを取る必要もない。どっちみちTPPだってリーダーシップを取れないのだから。
 ヨーロッパ(EU)と同じように人やモノの流通をボーダーレスにすれば、インバウンドを含めた観光に大きな成果があるのではないだろうか?当然、空や海、もしくは海底トンネルなど掘れば、陸路輸送のインフラだって発展するはずだ。通貨の統合まで至ればもっと流通が加速すると思うが・・・これは欧米が許さないであろう。

 通訳案内士法も間違いなく形骸化するだろう。
 この法律はアメリカンスタンダードではない。アメリカでは基本的に誰でもガイドはできる。ただ、この規制を緩和したところで団体で旅行をしないアメリカ人には何のメリットもないだろうが。
 
 
 結局のところ、TPPという貿易自由化構想は、日本の観光会社が生き残れるかどうか、とくに中小の旅行会社の問題と大きくかかわってくるだけで、一末端の労働者にとっては現状より決して上向かない賃金や労働条件と早く見切りがつけられるかどうかの道具としてしか働かないだろう。

 お客にとっては、ホテル、飛行機という確定要素を組み合わせて売る外国旅行会社のほうが、「人気添乗員」とか「ベストテン乗員」などと不確定要素をまるで確定要素のごとく宣伝して販売する日本の旅行会社より安心感があるように見える。
 ただ、日本人はとても忘れやすい国民らしい。自然災害も忘れる。戦争も忘れる。政治も忘れる。嫌なことも忘れる。辛いことも忘れる。いじめたことも忘れる。忘れることによって回復してきた。
 だから、不確定要素は、毎朝テレビでやっている星占いぐらいにしか考えていないかもしれない。当たったらもうけもの!外れてもそのときは猛烈に怒るかがっかりするか・・・またすぐ忘れてしまう。

 こんな国民だから、それなりに日本の旅行会社が安心ということになるのかもしれない?
 格安の根拠を忘却するように安心の根拠は自分でも未定なのだ。

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