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今も昔も「旅行は空洞化」

観光の時代―Tourism Marketing Journal’98~’99観光の時代―Tourism Marketing Journal’98~’99
(1999/12)
小林 天心

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・・・・・・・・・・・・・・旅行の場合はどうであろう。ルーティング、日程の取り方、ホテルの選別その他、旅行を構成する要素は多いし、変化に富んでいる。シーズンごとに観光の目玉が変わることだって大いにあり得る。歴史的な、あるいは文化的な背景、現地事情についての徹底的な説明(これを通訳と同様「インタープリテーション」という)などの要素も加わる。

 やはり旅行も、これら大量のノウハウの集積こそが、優れた旅行と十分な利益のための条件、プロ=専門家の存在証明だったはずである。ところが実態は、何が何でも価格の安さだけで勝負、という風潮を旅行業自らがつくり出してしまった。これは過去三〇年間、一貫して市場が拡大し続け、旅行業がその「処理」に忙殺されたためかもしれない。知的集積はないがしろにされ続けた。これが「空洞化」である。

 それでも、消費者にとっては「安いことはいいことだ」という錦の御旗があるものだから、誰も安売り競争に正面切って反対できない。となれば、大量に仕入れ大量に売れるところほど売り値を安くすることができるというのは自明の理である。それより下位の各社は、採算が取れようが取れまいが「降りかかる火の粉は払わねばならず」、マイナスを最小化するためにも対抗措置を取らざるを得ない。際限のない利益率の低下はこうして出来上がった。

 確かに、市場におけるリピーターの増加に伴い、「航空便+ホテル」で十分、という客層が伸びている事実はある。多様化するFIT(個人自由旅行)需要に、とてもパッケージ旅行では追いつくことができない。しかし一方では、本当はパッケージを利用したいのに、あまりに画一的なものしか見当たらないから、仕方なく格安航空券とホテルで、という判断をしている層も相当ある事実を忘れてはならない。

 こういう客層だって、現地では各種の支出を余儀なくされている。パーツ、パーツでパッケージより遥かに高いものを購入、消費している可能性が高い。不便と割高を承知で、消費者は旅行会社離れに踏み切っているとも言えよう。
 滞在型の旅行ならまだしも、周遊型ともなれば、本来旅行会社が機能し得る、また機能しなくてはならない要素が多い。仕入れ・手配という機能の他に、いわゆるソフト面におけるノウハが大変に重要である。よく言う「付加価値」というのは、この部分に大きく期待できるはずのものなのだ。

 医者、弁護士、教師などという職業も、その分野における知的ノウハウの取得により、顧客から収入を得る。その基盤を成しているのは「専門家としてのノウハウに対する無条件の信頼」と言っていいだろう。シロウトとクロウトの差が歴然としていれば自ずとそうなる。
 ところが旅行では、ままこれが逆転する。シロウトの方がはるかにクロウトだったりする。
『地球の歩き方』などというシロウト体験談集がクロウトの知識をたやすく超えてしまう。たまたま一回見聞きしたにすぎない症例集が、一般原則として大手を振ってまかり通るのである。それどころか、どこの旅行会社のスタッフも今やこうしたガイドブックを重要な「参考書」として使用している。これがプロであるはずの「旅行業」 の実態である。
 これでは「旅行会社無用論」もむべなるかなだ。あとはせめて安さでその存在証明に走るしかなかろう。
 旅行会社の企画部員で、少なくとも一年に五、六回、旅行先の調査に出かけている人間が何人いるか。詳細なデータ集めをし、新しい商品とパンフレットにそれらを反映させている旅行会社がどれだけあるだろう。
 大手各社のメジャーな旅行先における商品をチェックしてみると、何年間も実態が大して変わっいない例を数多く見ることができる。変化(それも値下がり)しているのは値段だけ、と言ってよい。
 プランナーが自信を持って消費者に語りかけるコピーが果たしてあるか。消費者が及びもつかないほどの文献を読みこなすスタッフはいるか。豊かな感受性をもってみずみずしい新商品を作り出せるスタッフがいるか。
 おそらく、この点の徹底した再検証なしに旅行業の再生はあり得ないだろう。プロにしか「空洞」は埋められないのだ。
(『トラベルダイジェスト』 98・3・1)


 このコラムは、小林氏が1998年3月に書いたものだ。
 格安競争だけに走る旅行業を痛烈に批判している。格安競争を批判したのは何も小林氏だけではなく、旅行業を含めた多くの関係者が一様に「格安からの脱却」を叫んでいた。
 しかし・・・・・・
 現実はどうだろう。
 
 この小林氏のコラムは現在でも十分通じるものではないだろうか?
 
 いや、前以上の格安競争になった・・・・
 小林氏は、それ以前(1998年以前)があまりにひどい格安だからこのような視点をもったのだろう。
 だから、それ以前に比べたら、現在はすさまじい格安競争ということになる。


 「医者、弁護士、教師などという職業も、その分野における知的ノウハウの取得により、顧客から収入を得る。その基盤を成しているのは「専門家としてのノウハウに対する無条件の信頼」と言っていいだろう。シロウトとクロウトの差が歴然としていれば自ずとそうなる。
 ところが旅行では、ままこれが逆転する。シロウトの方がはるかにクロウトだったりする。・・・」
 と小林氏は書く。

 21世紀は、旅行業もプロ意識を持たなければならなかったはずだ。
 しかし、現実は、インターネットなどの情報産業の発達によって、誰もがプロになれる時代になってしまった。
 だから、旅行専門家がプロに返り咲くのではなく、医者や弁護士や教師が、どちらかというと、旅行業に近づいてきたようだ。
 
 今、けっこうな人が、医者も弁護士も教師もその肩書きで信用することはしない・・・・・
 けっこうなワルも多い。
 また、ある程度の知識は、その方々の処方を請うまでもなく、インターネットで調べることは可能だ。

 旅行業者は、「地球の歩き方」というシロウトの書いた本だけでなく、今では、WEB上にあふれ出る多くのシロウトの書き込みを参考にしている。
 そして、こういう情報を人より先に発見するのが、プロ?という認識に至ったようだ。

 当時は形すらはっきりしなかったダイナミックツアーやエクスペディアのような外国企業が、今は大手を振って日本の旅行産業を闊歩している。
 当時は、『・・・、仕方なく格安航空券とホテルで、という判断・・・・』していたお客は、今では喜んでFIT需要となっていることだろう。

 シロウトとプロ・・・・
 旅行業者はシロウトとなり、お客はプロとなった。

 旅行業者にとって、「安いことはいいことだ」という錦の御旗がなくなれば、ただのシロウトになってしまうのではないか?
 JAL、JTBというブランド力が通じる時代がいつまで続くか・・・・・・
 

 
 
 
 
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