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そういう旅人になりたい・・・

 人生の旅・・・人間としての旅・・・生き方としての旅・・・

 こればかりは、旅行会社がアレンジしてくれない。
 自分で見つけるしかない。

リーダーシップの旅  見えないものを見る (光文社新書)リーダーシップの旅 見えないものを見る (光文社新書)
(2007/02/16)
野田 智義、金井 壽宏 他

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あとがき

 本書では、リーダーとは何か、リーダーシップとは何か、を自分に引きつけて議論してきた。既存の「すごいリーダー幻想」に疑問を投げかけ、マネジメントとの対比によってリーダーシップの本質を掘り下げ、リーダーシップの旅を展望した上で、旅の途中で磨かれ、同時に必要とされる力を概観した。
それでは旅を貫徹し、リーダーに結果としてなることにどんな意味があるのだろうか。旅の結果がどれほど重要なのだろうか。

 もちろん、よい組織、よい社会という「見えないもの」を見たいと願って一歩を踏み出した以上、それが実現できた方がいい。旅の途中で授かったギフトを人や社会に返すことができれば、何よりも本望だろう。
 しかし、そこに本当の意味があるのではないと私は思う。旅は予期せぬ出来事に満ちあふれているから、本人の意志にかかわらず、旅を続けられなくなることもあるだろう。また、私たちの人生という時間は限られているから、次の風景を見ずに、突然、旅の終わりが告げられることもあるだろう。
 したがって、いつ旅が続けられなくなっても、自分に納得できるよう一歩を歩み続ける。
 旅の結果よりも、そのこと自体が一番重要ではないか。そんなふうに私は考える。リーダーシップは一人称で考えるものだから、人や世間からどう評価されようと、自分は自分で「裁く」ものだ。そのために、自分と向き合い、旅人としての自分の今を問い続ける。

 黒澤明監督の『生きる』を観た人は、読者の中にも多いだろうと思う。この作品の主人公は志村喬さん演ずる市役所の渡辺課長だ。まじめに生きてきたが、事なかれ主義で、まるでそれが唯一の仕事であるかのように書類にハンコばかり押している。そんな渡辺課長が定年を間近に控えて、胃ガンの宣告を受ける。小役人が己の死と向き合うことによって、物語は動き始める。
 これまでの無為な人生を悔いた渡辺は、役所が手を付けてこなかった陳情書に目を通し、最後の仕事として、下水溜まりの埋め立てと公園建設に奔走し始める。長屋の主婦たちの要望に耳を傾け、上役には楯つき、権益に群がる暴力団まがいの男たちともやり合う。苦労の甲斐あって公園は完成する。しかし、その功績は、出世欲が強く立ち回りがうまい助役に横取りされてしまう。雪の降る夜、公園のブランコに揺られながら、渡辺はひっそりと命をひきとる。
 映画では葬式のシーンが長く続く。長屋の主婦たちが、渡辺課長の遺影に向かって、泣きながら感謝の言葉をかける。同僚たちは、なぜ渡辺があれほど公園作りに固執したのかを話し込むうちに、彼が死期を悟っていたのだとようやく気づく。手柄を上役に横取りされて、さぞかし無念だったろうと一同が沈み込む中、最後に公園で渡辺の帽子を拾ったという警官が焼香にくる。警官は、あの夜公園で、渡辺に声をかけていたら死なせずにすんだかもしれないとわびつつ、なぜ声をかけそびれたのかを明かす。声をかけられなかったのは、渡辺がブランコに揺られながら、しあわせそうに歌をうたっていたからだった。
 渡辺課長は死を目前にして、自分と対峠し、自分がどう生きたいのか、何を見たいのかを改めて考えたのだろう。彼にとっての「見えないもの」は、雨が降っても水はけがよい場所で、子供たちが元気に遊び、住民が生きいきと暮らせる町の姿だった。そしてその町の片隅に立つ自分の姿だった。役人として手柄を立てたかったわけではなく、社会からの評価が欲しかったのでもない。死を前に「生きる」意味をとらえ直した時、彼にとってのリーダーシップの旅が始まった。その旅は短かったけれど、彼は納得ある人生を生き切った。

 この本の最初にもふれた通り、私たちにとって、リーダーシップとは「生き様」の問題なのだと思う。つまり自分はどんな人生を送るのかと同義であり、本当の意味で納得できる人生が送れたならば、そこには人それぞれの旅の軌跡が残るのだろう。
 しかし、私たちはなかなか納得できる人生を生き切れない。世間や組織の目が気になったり、常識、過去、しがらみにとらわれ、日常に振り回され、多忙を理由に問題を先送りにする。私たちは弱い存在だ。慣性に流されて生きる方が気楽だから、自分と対峙し、苦闘するよりも、安易な道をどうしても選びたくなる。

 東京・三田の龍源寺の住職、松原哲明和尚は「人間は不幸だ」と説く。人生は一度きりしかない。その人生という海原に、私たちは何の手本もなく、練習もせずに船を漕ぎ出していかなくてはならない。海図は自ら作っていくしかない。ああ学んだ、これで人生が分かったと思うと、その時、死が訪れる。私たちは、どう生きるべきかを、一回きりの本番しかない人生の中で試される。
 どうすればいいだろうか。
 自分と真摯に向き合うことで、人生の節目をつくつていくことだ、と松原和尚は説く。大きな分かれ目で、自分が歩んできた道を振り返り、自分とは何者であり、何をするために生まれてきたのかを問う。もちろん正解なんてあるはずがない。そんなことがすぐに明確になるはずもない。それでも問い続ける。それが生と向き合うことであり、同時に死から目をそらさないことでもあるのだろう。

 アップル・コンピュータの創業者であり、一時同社を追われて後にCEOに復帰したスティーブ・ジョブズが、二〇〇五年六月、スタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチが、インターネット上で話題となつた。私も映像を見たが、とりわけ死にまつわる話が感動的だった。少し長いが、その一部を抜粋して引用しよう。

Remembering that I'll be dead soon is the most important tool I' ve ever encountered to help me make the big choices in life. Because almost everything - all external expectations, all pride, all fear of embarrassment or failure - these things just fall away in the face of death, leaving only what is truly important. Remembering that you are going to die is the best way I know to avoid the trap of thinking you have something to lose. You are already naked. There is no reason not to follow your heart.

 「自分が死と隣り合わせであることを忘れずにいること、それは、私が知る限り、人生の大きな決断を助けてくれる最も重要な道具だ。なぜなら、ほとんどすべてのこと、他人からの期待やプライド、恥をかくことや失敗することに対する様々な恐れ、これらのことは死を前にして消えてしまうからだ。そして本当に大切なことしか残らない。いつかは死ぬと意識していることが、何かを失うのではないかという思考のワナに陥ることを避ける、私が知る限りの最善の方法だ。君たちはすでに素っ裸だ。自分の心のままに行動しない理由など何もない」

 この後のくだりで、ジョブズはおよそ一年前にガンと診断され、手術を受けて全快したことを告白した。死とは 「我々すべてが共有する運命」であり、「古きものを一掃し、新しきものに道筋をつくるもの」と話し、さらにこう続ける。

our time is limited, so don' t waste it living someone else' s life. Don' t be trapped by dogma - which is living with the results of other people' s thinking. Don' t let the noise of others' opinions drown out your own inner voice. And most important, have the courage to follow your heart and intuition. They somehow already know what you truly want to become. Everything else is secondary.

 「君たちの時間は限られている。だから自分以外のだれかの人生を生きて無駄にしてはいけない。ドグマのワナに絡め取られてはならない。それは、他人が考えたことの結果に従って生きることだ。他人の意見に、自分自身の内なる声をかき消されてはいけない。そして、最も重要なことは、自分の心と直感に従う勇気をもつことだ。心と直感はどういうわけか、君たちが本当になりたいものをすでに知っている。その他すべては、二の次だ」

 私も読者の皆さんも、ガンになりたくないし、死にたいなどと思っているわけではない。
それに、病気にならないとリーダーシップの旅を歩めないわけでもない。だが、死生観をもつこと、死から目をそらさず現実的なものと意識することによって、人は初めて生の意味を知るのだろう。
 私はいつも、自分はちっぽけな存在だと感じる。宇宙から見たら、自分の一生などあまりにも短く、ささいなことにすぎない。別に宇宙などと仰々しいものをもち出さなくても、身近な組織の中でもそうだ。組織は個人の記憶を残さない。どんなに頑張ってやった仕事でも、数年たてば、だれがやったかということなど忘れ去られる。私があれほど尊敬した、我が師スマントラ・ゴシャールでさえ、悲しいことにすでに人々の記憶から薄れ始めている。
 しかし、人の営みはそうやってつくられてきたし、未来永劫そのようにしてつながっていく。「生」はちっぽけだが、生きる当人にとっては大きな意味がある。そして、私も含めてその生を精一杯生き切ろうとするすべての人の前に、リーダーシップの旅は無限の広がりを見せている。私は、そう信じている。
 
 最後に、もう一つだけ映画の話をして、この本を締めくくらせてもらえればと思う。
 先ほど挙げた映画『スパイダーマン』シリーズのパート2に、とても印象的な言葉がある。
スランプに陥り、正義の味方を続ける気持ちを失いかけたピーターに、母親代わりのメイ叔母さんが言い聞かせるセリフだ。

 I believe there' s a hero in all of us, that keeps us honest, gives us strength, makes us noble, and finally allows us to die with pride. Even though sometimes we have to be steady and given up the thing we want the most. Even our dreams.

 「私たちだれの中にもヒーローはいる。だから正直に勇気をもって気高く生きられる。そして最後は誇りをもって死ねる。だから、時には毅然として大事なものをあきらめることもある。夢さえもーー 」

 リーダーシップ、それはたつた一回の人生という旅であり、生の意味を問い続けるプロセスだ。本当に大切なものが分かれば、時にはこれまで大切にしていたものをあきらめることもできる。自分を閉じ込めていた内なる竜と戦うことで、さらに険しい上り坂の旅を続けられる。
 もちろん私自身の人生は、映画ほどきれいじやない。 NPO活動を通じて、リーダーシップの旅に一歩を踏み入れてからも、悩み、迷い、壁にぶつかることの連続だ。物事はスパッと割り切れず、いつも混沌の中だ。周囲の人に迷惑をかけ、すぐに反省する。
 しかし、「内なる声を聴いて歩くすべての人の前に、リーダーシップの旅は開けている」。
 私は、自分にそう言い聞かせて、生きていければと願っている。


 
スティーブ・ジョブズの言葉
 「君たちはすでに素っ裸だ」You are already naked.

 年齢は関係ないだろう・・・
 性別も関係ないだろう・・・

 そういう旅人になりたい・・・


 


 
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