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東京郊外の駅で・・・・


 先日、東京郊外のある駅で列車を待っていた。
 暑い午後だった。人影もまばらだ。
 ホームのベンチに腰を下ろすと汗が噴出してきた。
 ハンカチを取ろうとカバンのなかを覗き込んでいると、一人の人間が私の脇をゆっくりと横切るとそのままホームの端から消えていったのだ。

 「・・・・・・?」
 わたしは、ビックリした!
 ホームから突然消えたのだ。
 
 わたしは急いで立ち上がりホームの端へ走り寄った。
 すると、ショートカットの女性が、線路のレールの間でひざを抱え込むようにしてしゃがみこんでいた。
 ホームから偶然落ちたのではない。
 自殺するつもりで飛び降りたのだ。

 列車はまだ来る気配はなかった。
 わたしは、非常用ボタンを探そうとキョロキョロしていると、線路の遠くから、「オーーー!いたぞ!」という駅員の声と姿がみえた。
 
 あとでわかったことだが、この女性、最初、反対側の線路に下りたらしい。しかし、そちら側の線路はしばらく列車が来ないと思ったらしく、再びプラットホームによじ登ると、今度は、その反対側つまり私の座っていたベンチの前に飛び降りたらしい。
 最初に降りたとき、それに気づいた乗客が非常用ボタンを押したので、走行列車はすべて停止となり駅員は線路に立ち入った人を必死になって探していたのだ。

 数名の駅員により彼女はホームに吊り上げられると、わたしの座っていたベンチに保護された。
 小柄で少しぽっちゃりとした女性だった。
 大きなマスクをしていたが、まだ若いのではないだろうか。
 
 一人の若そうな駅員が、「大丈夫ですか!大丈夫ですか!」と何度も連呼していたが、彼女は、小脇にセカンドバックをきつく抱えながら、肩をふるわせて泣いていた。
 駅員の「大丈夫ですか!」という連呼に、彼女の首が動いてはいたが、それが嗚咽の動作にも私には見えた。
 しかし、その駅員は、彼女はもう落ち着いたと理解したのか、ベンチから離れると、ホームのどこかにいるらしき仲間の駅員を探し始め、遠くにそれを発見すると、「もう大丈夫です!列車、運行させてください」と言った。
 そのあいだ、我々、彼女の近くにいた乗客は、一人取り残された彼女がいつまた飛び降りるではないか!とヒヤヒヤして見守っていた。
 この駅員は、どうしてこうも簡単に「大丈夫です」と言えるのか?
 そんな人が、列車に飛び込もうとするのだろうか?

 しばらくすると、もう少し年長の駅員がやってきた。
 彼女はまだ泣いていた。
 その年長の駅員は、開口一番、大きな声で、
「 みんなが迷惑してんだよ!あなたがこんなことをしたせいで、誰かが非常ボタンを押しちゃったんだよ!わかる!それで、全部の列車が止まっちゃったんだよ!!ほら、列車、来ないでしょ!みんな、迷惑してんだよ!!!」
 と言った。

 わたしは、そこまで言わなくてもいいのに・・・と思った。
 わたしだけではなく、そのまわりにいた誰もが、そう感じたんではないだろうか。
 しかし、その駅員は逆にとらえた・・・・・・・
 
 その証拠が、彼の言い方は彼女へささやくというより、周りの私たちへ聞こえるようなパフォーマンスであった。
 大衆のクレームの代弁者として、この駅員は自己保全に走ったのだ。
 彼らにとって、1割のクレーマーが大衆のように見える。何も言わないか、好意的な人たちは怖くはないからそのように感じてしまう。
 1割のクレーマーの代弁者として、この駅員は、自殺しようとした彼女を罵倒した。


 わたしは、この駅員を見ながら、旅行を考えた。
 この駅員のような添乗員はけっこういる。
 事故やトラブルが発生したとき、事故やトラブルの当事者より、その他多数の参加者の思惑を添乗員が忖度して、当事者を罵倒する光景・・・・・
 
 アンケートにトラブルの当事者よりその他参加者からクレームをもらうほうが自己評価に響くと感じるためか・・・

 事故やトラブルは起こらないほうがいい。
 そのために予防をするのだろう。
 でも、完全なものはないから、事故やトラブルは起きてしまう。
 とくに、個人や弱者のトラブルは、誰もがなりえることではないか。
 だから、当事者のトラブルは何より優先されるべきだと思う。
 もし、自分はそのようなトラブルは起こさないという自信のある完璧人間なら、個人で行動すればいい。
 集団に参加すべきではないと思う。
 集団(社会)とはそういうものではないだろうか。

 
 自殺しようとした彼女は、すすり泣きながら、こう言った。
 「・・・・もう、お金がないんです・・・・どうしたらいいか・・・・お金がないんです・・・・」

 反対側のプラットフォームから、もう一人の駅員の声が響いた。
 「そこに置いとかないで、早く、事務所へ連れて行ったほうがいい~~! また、いつ、飛び込むか、わかんねえぞ~~~」

 
 『言葉』は大事だ、と思った。

 

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