Home *  * All archives

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
tb: -- |  cm: --
go page top

車内のBGM

 
 ヨーロッパ添乗の際、長い単調なバス旅を快適に過ごすために車内で音楽を流すことがある。
 ただ、もうひとつ、添乗員にとっては音楽を流したい理由がある。
 この長いロングディスタンス(長距離移動)をガイドやアシスタントなしでやらなければならないということは音楽でも流さなければ間が持たないということである。

 はじめてドイツのノイシュバンシュタイン城へ行ったときのことだった。
 麓の売店でこの城の影のオーナーと呼んでもおかしくはない作曲家リヒャルト・ワグナーのカセットが売っていた。ワグナーの音楽など聴いたことがなかったが、まあこのファンタジーあふれるお城つくりに精を注いでいた王様の芸術的師匠であったワグナーのことだから、さぞやディズニーのテーマソングのごとく夢があり、いや、誰もが夢を見たくなるようなゆったりとしたクラッシックだろうと私なりに思っていた。
 さっそく、車内BGMにいいかとそのカセットを購入した。
 
 ノイシュバンシュタイン城の観光後ふもとで昼食を取った午後、さわやかな天候のもと、より山深いスイスアルプス方面へとバスを走らせた。
 間違いなく、ほとんどのお客が眠くなる。
 そこで、「待ってました!」とばかりに先ほど麓の村で購入したワグナーのカセットをドライバーに頼んでかけてもらう。

「先ほど皆さんが訪問した城は、19世紀、この国の王ルードヴィッヒ2世が自分の理想を実現させた城です。その自分の理想とは、自分の父のように、また、恋人のように敬愛してやまないワグナーの世界です 」

 わたしは偉そうな方便をのたまうが、昨晩ガイドブックで仕入れた適当な情報だ。もちろん、ワグナーの音楽も聴いたことがないし、このカセットにどんな音楽が入っているかも知らなかった。
ただ、我ながら演出としてはなかなかいいんじゃないかと思っていた。

食後のウトウト感!心地よいバスの揺れ!長閑な景色!そこへ先ほど観光した城を再度印象付けるようなワグナーの魅惑の世界・・・・・・!

 ドライバーがカセットを挿入口へ差し込んだ。
うん?
なかなか音楽がならない。売店で安値で売られていたカセットだったので心配になった。
うん?
ドライバーも、あれ?という感じでハンドル片手にカセットデッキのボリュームをいじり出した。
おかしいなあ?という風に私とドライバーの目が合った瞬間だった!
すごい音響がバス中に響き渡ったのだった!!


[VOON] 01 - 楽劇「ヴァルキューレ」 ヴァルキューレの騎行第三幕

ドライバーは急いでボリュームを抑えてくれたが、私を含めてお客全員のウトウト感が吹っ飛んだのはいうまでもない。それどころか、心臓まで停まりそうな爆発音だった・・・・・
ドライバーがボリュームを抑えてくれたのだが、それでも、なかなかそのドキドキ感は治まらない。そのうち、女性の悲鳴のような歌声が聞こえてきた・・・・
 限界である!車内は完全に『地獄の黙示録』状態になった。
 もともとこの音楽、ワグナーの音楽は、BGMに合わなかったのだ。
私は単純に、この地にゆかりの音楽をかけようと思ったことが失敗だったようだ。

 BGMとしてかける音楽はBGMとして市販されているものでなければいけない!という教訓になった。


 ちなみに、リヒャルト・ワグナーほど、政治に大きな影響を与えた作曲家はいないだろう。
彼の思考そのものが、アーリア人(ホワイト)崇拝から繋がる郷土崇拝へ、そしてそのために必要な差別という純血主義に至る人生観、国家観、芸術観をもっている。

 そのワグナーを師と仰ぎ、ワグナーそのものに成りたがった政治家が、アドルフ・ヒトラーである。

 ヒトラーだけではなく、ワグネリアン(Wagnerian)と呼ばれる多くのワグナー信者は皆、ワグナーが作曲した全曲に深く通じているはずだが、わたしはあえてヒトラーに「一番好きなワグナーは?」とたずねたとしたら、どう答えるかなと思った。
わたしの想像では、やはり、『リエンツィ』Rienzi ではないかと思う。
ワーグナーのまだ無名時代、不運時代のオペラ、『リエンツィ』

ヒトラーは幼少時からワグナーの音楽に強いシンパシーを抱いていた。その彼が、16歳(1905、6年)の11月、ドイツ国境に近いオーストリアのリンツの歌劇場ではじめて見たワーグナーオペラが、『リエンツィ』だ。
その衝撃は半端ではなかったらしい。放心状態の後、狂ったように感動に酔いしれた。

  彼の人生が変わった瞬間であった。

 ワーグナーのオペラ『リエンツィ』は、14世紀のローマが舞台だ。市民の熱狂的な支持のもと、為政者となったリエンツィが、最終的に、市民の離反のもと殺されて行くストーリーだ。

誰かに似ていないだろうか!
ヒトラーはリエンツィを現実の世界で演じてしまったのではないだろうか・・・・
たぶん、ヒトラー自身は、自分をリエンツィと同じヒーローと思っていたにちがいない。







tb: 0 |  cm: 0
go page top

この記事に対するコメント

go page top

コメントの投稿

go page top

トラックバック

トラックバックURL
→http://intouch.blog56.fc2.com/tb.php/485-f75c2d96
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
go page top

新着記事+関連エントリー

カレンダー

カテゴリ

最新コメント

プロフィール

ブログ翻訳

旅行業の本

添乗に役立つ本

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。