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都市と田舎

 成田空港は、日本の表玄関である。
関西空港や名古屋空港、または地方空港は、まだとても表玄関と呼べるほどではない。

 大手旅行会社のツアー、中小の個性あるツアーをふくめ、成田空港を玄関としてツアーを企画している。
だから、日本中のお客様は、成田空港に集合し一本のツアーとなって海外へ赴くこととなる(たまに関空あたりからくるお客と現地空港やホテルで一本化される格安ツアーもあるにはあるが。新日本トラベルの得意技であったが、危険な賭けである)

日本中、北は北海道から南は九州、沖縄までお客様は成田空港へあつまって、一本の団体となって現地へ向かう。
風土、環境のそれぞれ違う者たちが集合するわけだから、団体行動もそれは大変ではないかと思うかもしれないが、そんなことはない。
情報の共有化時代なのか、テレビ、雑誌などで価値観は統一されたようで、それほど大きな違いはないのだ。

ツアーが進むにしたがって、
「どちらから、きましたか?」などと聞かれてから、自ら価値観を意識しだすことも多い。
「ああ、あの方は沖縄の方だから、のんびりしているのね・・」
「あの方は、大阪の方だから、値切るのが好きなのね」
・ ・・・
などど、本来それほど地域格差のない価値観をみずから意識させるのである。
住所、年齢、仕事・・・・
こういう情報がツアー進行とともに詳しくなると、それぞれが自分なりのカテゴリーに当てはめて行くのだ。

現在、日本だけではなく、世界中の価値観はそれほど違わなくなってきたのではないか?
都会に住む世界中の人々の生活は同一化されつつある。

核家族化され賃貸のアパートメントに暮らす共働きの夫婦は、カシオやシチズンの目覚まし時計でベッドから起きると、サムソンの液晶テレビをつけ、ケロッグのシリアルで朝食をすませ、中国製のスーツ、カバン、靴を身につけ、最新・高速の地下鉄やバスで会社へ向かい、ノキアやLGの携帯電話をチェックし、ipodのマイミュージックでテンションをあげ、無機質な高層ビルのオフィスでパソコンを開き、インターネットで万国共通の情報に満足し、退社後は友人とスターバックスで休憩、セブンイレブンやウォルマートでインスタントフード、P&Gの衛生用品などを購入し、帰宅後は電子レンジでそれを暖め、冷蔵庫から世界ブランドのネスレやコカコーラを取り出し、自慢のソニーのオーディオでDVDでアニメを見るかニンテンドーのゲームを楽しもうか・・・・・

都会の生活は、アメリカだろうとアフリカだろうとアジアだろうとどこも同じようになってきている。
以前は感じた生活臭がどこの国へ行ってもしなくなってきた。
ITインスタント社会では、臭いは天敵なのかもしれない。
だから日本で消臭剤が売れるのだろうか?味や臭いは添加するものであって、最初は無味乾燥していなければいけないらしい。だから世界中で同じ臭いが漂っている。

逆に最近思うことは、都市と田舎の違いである。
たとえば、東京の人とニューヨークの人の価値観より東京の人と新潟や青森あたりの農家の人の価値観のほうが差が大きいのではないかと思うことがある。

ツアーでむずかしいのは、地域の混在より、こういう都市と田舎の混在のほうである。

ツアーで現地を観光する。
都市住民は、少しでもフリータイムがあると喜ぶ。
反対に田舎住民は、少しでもフリータイムがあると、「どうすりゃいいんだ!こういうのは団長(添乗員)が何とかしてくんなきゃ!」と怒り出す。

また、自分たちが伝統的に体得した価値観以外なかなか受け入れようとしてくれない。論理や科学より地元の祈祷師のほうが信用されるコミュニティがそこにはある。

Grindelwald1[3]

スイスの山岳リゾート、グリンデルワルドに宿泊したときだった。
スイスアルプス、ベルナーオーバーラント地方の山々に囲まれ、ホテルの目の前には4000メートル級の秀峰アイガーが美しい姿を魅せてくれている。
澄み切った空には、鳥のさえずりが天をつき、長閑で居心地のいい空間である。
ホテルマンの暖かい笑顔に迎えられ、お客様はそれぞれの部屋へ散って行く。
お客様の部屋は、4階と5階である。
チェックイン後しばらくすると、4階のあるお客様より電話をもらった。
「ちょっときてもらいたい」
部屋を訪問すると、神妙な面持ちでバルコニーへ通じる大きな窓へ連れて行かれた。
「これ、見てくれ!」
と、窓をガチャガチャと動かして、「ここの鍵が閉まんねえ、こんなんじゃ、安心して眠れねえ!」と言った。
確かに建てつけがずれたのか窓をとじて鍵を閉めようとしてもうまくはまらない。ただ、窓からバルコニーへ出てみると、そこには美しいアルプスの景色が広がっているだけで、どこからもその独立したバルコニーへ侵入できそうもなかった。
私は心のなかでは、[これぐらいは仕方がないのではないか]と思ったが、田舎から出てきたそのご婦人たち(5人グループで参加、そこは3人部屋だった)の立場に立てばわからないことではないと、ホテルの人に聞いてみますと言った。ホテルのサブ支配人らしきユダヤ帽をかぶった男性がすぐ来てくれたが、彼は私がいくら説明してもそのことが解せないというように、「どこが問題なのだ?ここの鍵はまったく問題ない!これは飾りと一緒だ!このホテルは設立してから半世紀以上たつが、今だかつてここから泥棒が入ったことは一度もないんだ!何かあったらホテルが保証する!」

「すいませんが、ホテルの方もこのように申しておりますので・・・」、といったが、このグループの表情はまったく納得していなかった。
わたしは、仕方なしに、ホテルのサブ支配人に言った。
「もし別な部屋があれば、代えてもらえないか?」
「わるいけど、本日はもう一杯だ。この鍵ならまったく心配ないと伝えてくれないか」

その場は一応そういうことで収まったが、夕食後、今度は同じグループの別部屋のリーダーらしきご婦人が、ものすごい剣幕で、「おい!添乗員!なにやってんだ!鍵も閉まんねえようなところに泊める気か!みんな、こわがってんぞ!ちゃんと聞いてきてんだぞ!外国は危険だ!って聞いてんだ!」
理屈で判断しようとする人たちではない。
わたしは、もう一度、サブ支配人のところへ行かざるおえなくなった。
さっきの様子ではホテル側もかなり憤慨していることはわかっていたが、仕方ない。
私の顔を見るなり、あきれたような表情をして、「さっきのことか?」と言った。
「そうなんだ・・・どうにかならないか?」と聞いた。
彼は少し間をおいて、「ひとつだけ方法はある。ただ、それはかなりリスクがいるが・・・」と言った。

しばらくして、冷めた空気をつんざくような大きなカナズチの音がホテル中に響き渡ったのだった。
そう、サブ支配人の出した案は、その窓の鍵の部分をカナズチで叩いて無理やりロックさせる方法であった。ただ、そうすると、自力ではもう二度と窓が開くことはない。もちろん、バルコニーに出て、美しいアルプスの風景を見ることはできない。
そのグループにはそのことを事前に説明した。それでいい、とのことだった。

翌日、他のお客様から、「昨日は大変だったらしいわね」といわれた。
あのグループがあっちこっちで自分たちの武勇伝?を吹聴していたようだ。
「じつは、私のところも閉まらなかったけど・・・」

私が一番に感じたリスクは、見晴らしのよい4階の部屋まで外壁を登ってくる泥棒より断然確率の高いだろう火災が発生した場合、この3人は窓から非難することは不可能になったということだった。

このような田舎のお客様は、悪い人たちではない。自分に正直な人たちだ。ユーラシア旅行社やワールド航空のように、過剰な選民的サービスを求めているわけではない。何もわからないから全部保護してくれ!といっているだけだ。ある意味、旅行会社側から言えば、とてもだましやすいお客様で、ショッピングに入れこんでも、「わざわざありがとう」と単純に感謝するお客様だ。

添乗員の立場に立てば、とても頼りにされるだけ、遣り甲斐のあるお客様といえる。
ただ、このようなお客様しか申込まないような農協観光やタビックスであれば、添乗員も単純にフレンドリーに世話をやいてあげればいいが、都市部の住民とこの人のよい田舎の住民が混載された場合は、なかなか単純にはいかない。
都市部のもう何度か旅行へ行っている方がたは、ツアーのメリットとデメリットを認識して、可能ならば主体的に行動したいと考えていたりする。
ベタベタされるより、付かず離れずが、ベターなのだ。





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この記事に対するコメント

No title

お役目ごくろうさまでした。一緒のツアーの人が添乗員さんに注意されても、何時もお財布しまわずにお店の外で札束数えていてました。こっちの方が危険でしょ。内心誰か盗っちゃえばいいのにと思った。認識の差?
自分も田舎者でーす。

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2010/11/28 13:03 * edit *
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