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有楽町で会いました!

 先日、有楽町駅の近くで人待ちをしていたら、ひとりの女性に声をかけられた。
 白髪のまじるその女性は、ちょっと不思議そうな顔で私を覗き込むと、
 「添乗員さんではないですか?」、と言った。

 そう言われて、まじまじとその女性の顔を眺めると、たしかに、どこかで見たような気がしてきた。

 「添乗員さんですよね!アア・・・よかった!別人だったらどうしようかと・・・!覚えてますか?
  ネエ・・主人とふたりで・・・」
 
 「!」ときた!
 女性のニッコリとした表情でピンときた!

 もう10年以上前になるだろうか?
 ヨーロッパの周遊ツアーでご一緒したお客様である。ご主人とふたり。とてもおもしろい夫婦であった。
 いつも、ご主人がいろんな質問を私にしてくるのだが、その背後で、「添乗員さんを困らせるんじゃないの!」、「ネエ・・・添乗員さん!」とニッコリ微笑むのがこの奥様であった。

 「だんなさんは、お元気ですか?」
 「元気、元気!元気すぎてこまちゃうぐらい!」
 「そうですか、それはよかったです。心臓が少し悪かったですよね・・・」
 「あら!覚えていてくださったの!」

 だいぶ思い出してきた。
 あのツアーは、たしか、早朝ロンドンからドイツのフランクフルトまで飛行機、ライン川クルーズの出発地だったリューデスハイムまでバスで移動、昼食後にクルーズをおこなって宿泊地ハイデルベルグまで再びバスで移動する、というような日程だった。
 そのフランクフルトまでの飛行機がかなり遅延していた。昼食場所に到着したのが、たしか3時近くになってしまったのだ。
 お客様は疲労と空腹で爆発してもおかしくない状態だったと思う。
 しかし、とても幸運だったのは、このこじんまりとした昼食レストランの雰囲気とサービスがとてもすばらしかったのである。こんなに遅れて到着したグループを満面の笑みで出迎えてくれて、急がせるでもなく、親切丁寧にサービスしてくれた。食事もおいしく感じられた。日本人グループでごったがえしてセカセカとサービスされるよりよっぽど印象深かったにちがいない。
 わたしは、お客様のその気持ちを察することができた。なぜなら、自分も同じように感じたからだ。
 だから、なかなか次の言葉がいえなかった。

 「船の出発時間が近づいていますので、急いで食べてください!」
 
 船の時間は、もうこれ以上ずらせなかった。
 私は、お客様の食事中、レストランから桟橋までの時間を計った。普通に歩いて約5分である。団体ならば、それ以上かかると思ったほうがよい。

 お客様たちは、ほんとうに疲れたとおもい、リラックスしながらノンビリと食事をしている。逆に通常よりゆっくり食べているようだった。
 トイレの時間も考えなくてはならない・・・・・
 私は、「トイレはひとつしかありませんので、皆さん、早めにお願いします!」と言ったのだが、こういう状態のときは、あまりお客の耳には届かないようだ。
 そして、もうこれ以上ダメ、というとき、私は、お客様に言った。
「すいませんが、船の出発時間が近づいています。そろそろ準備をお願いします」
「アア・・美味しかった!!・・それで、船は何分後の出発ですか?」
「ハイ、10分後です」
「アッそう・・・・エッ!、10分後!急がないと・・・・」
「ハイ、そうです。できましたら、トイレは船でお願いできますか」
 ということで、グループ一同のリラックスムードは一変して桟橋へ急いだのだ。

 団員一同小走りに急ぎながら、ライン川が見えてくると先ほどのご主人が私に聞いたのだった。
「それで、どの船に乗るの?」

ライン川クルーズ1

「たぶん、今、ご主人の横を並走して走っている船だと思います」
「エエッ!」
ご主人のスピードは、のんびりと優雅に手前の桟橋へむけて運行している観光船に負けまいと、一段とはねあがった。 
「添乗員さん!俺、心臓悪いんだよ!」
「エッ!じゃ・・むちゃしないでください!私が先に行って船に待っていただきますから!」
「頼むよ!!」
 
 このツアーはヨーロッパ周遊でけっこう長かった。
 参加客たちは後半にはとても仲良くなり、最終日の夕食後はホテルのバーで盛り上がっていた。
 そこで、ご主人は、「あのライン川は参ったね!!」と皆で大笑いしていた。
 私は、素直に、「ほんとうに申し訳ございませんでした」と言った。
 ご主人はそのとき、「添乗員さん、あのときの言葉がよかったよ! 大きな声で、ゆっくり急いでください!って」
 そして、皆でまた大笑いしていた。
 私はそんな記憶はないのだが・・・・・
「ゆっくり急いでください?って、どうすんだ?と思ったよ・・・・・でも、添乗員さんの人柄が出ていたよ」
 といわれた。
 そしてもう一人のお客様がこういった。
「不思議ですが、あそこで一体感が生まれましたね・・・今思えば、仲間になった気がします」

 私の失敗をこのように言ってくれるお客様は、今ではそう多くいないだろう。
 また、お客様からクレームが出ていなくても、このようなことを添乗日誌に書こうものなら、あれこれ聞かれて始末書でも書かされるのが昨今である。

 
 有楽町で会ったご婦人は、わたしに自分のアドレスを教えてくれた。
「ぜったい、連絡してくださいね。主人がほんとうに喜びますわ。遊びにきてくださいね」


 何十人ものお客様を毎回、添乗するといっても、そのお客様と街中で偶然お会いするということは滅多にない。
 ただ、お会いして二言三言おはなしすれば、名前こそ出では来ないが、一緒に旅した記憶は思い浮かんでくる。
 今の現実が、過去を呼び戻してくれる。
 とても嫌なお客様であったとしても、今の現実はそんな悪い印象がなければ、嫌な過去を思い出すまでには至らない。

 私の本箱の引き出しには、ツアーで撮った団体集合写真が積み重ねられている。国内ツアーの添乗をすると必ずといっていいぐらい団体集合写真を撮る。このセールスから販売まで、添乗業務に組み込まれている。写真やは、サービスのつもりか添乗員にそのうちの1枚をプレゼントしてくれる。海外では、団体集合写真を撮ることはあまりないが、地域や旅行会社によっては、たまに用意されていたりする(添乗員に撮らせる会社もある)。海外でもその場合、1枚プレゼントしてくれる。
 こちらがほしがったわけではないが、せっかくプレゼントしてくれた写真なので、引き出しに放り込んでいたら、いつのまにか相当な量になった。
 その後、その写真を見ることはまずない。
 
 街中で偶然出会ったのとは違い、そういう写真をみると、けっこう気が重かったりするのだ。
 忘れたい過去をほじくり返されたような・・・・・
 当時の印象で全員が映っているのだ。
 まだ、国内はいいかもしれない。
 期間が短いので、個人個人の印象は薄い・・・・
 海外は、・・・・・・・
 良かったツアーでも、嫌なことや恥ずかしいことを思い出したりする。

団体集合写真1
団体集合写真のカメラマン






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