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日常の非日常


『辺境・近境』 村上春樹著 新潮社 (1998年発行)より


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 でも前にも言ったように、こうして誰でもどこにでも行けるようになって、今ではすでに辺境というものがなくなってしまったし、冒険の質もすっかり変わってしまった。「探検」とか「秘境」とかいった言葉がどんどん陳腐化して、現実のレベルではほとんど使えないような状況になってしまった。まあテレビなんかは今でも「秘境なんとか」というような大時代なタイトルをつけたワイド番組をやっているみたいだけれど、そんなものを真に受けているようなナイーヴな人は実際にはほとんどいないですよね。そういう意味では、たしかに今は旅行記にとってあまりハッピーな時代ではないかもしれないです。
 でもいずれにせよ、旅行をするという行為がそもそもの成り立ちとして、大なり小なり旅行する人に意識の変革を迫るものであるなら、旅行を描く作業もやはりその動きを反映したものでなくてはならないと思います。その本質はいつの時代になっても変わりませんよね。それが旅行記というものの持つ本来的な意味だから。「どこそこに行きました。こんなものがありました。こんなことをしました」という面白さ珍奇さを並列的にずらずらと並べただけでは、なかなか人は読んではくれません。(それがどのように日常から離れながらも、しかし同時にどれくらい日常に隣接しているか)ということを(順番が逆でもいいんですが)、複合的に明らかにしていかなくてはいけないだろうと、僕は思うんです。そしてまた本当の新鮮な感動というのはそこから生まれてくるものだろうと

 いちばん大事なのは、このように辺境の消滅した時代にあっても、自分という人間の中にはいまだに辺境を作り出せる場所があるんだと信じることだと思います。そしてそういう思いを追確認することが、即ち旅ですよね。そういう見極めみたいなものがなかったら、たとえ地の果てまで行っても辺境はたぶん見つからないでしょう。そういう時代だから。

       (雑誌「波」初出誌 1990年9月)






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