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スタンプ

 国内パックツアーには、昔からショッピングがつきものだ。

 国内パックツアーの添乗員への指示書には、ある観光名所のバス駐車場は、「御土産屋・・・の駐車場」などと書き込まれている。公共のバス駐車場を利用すれば、駐車料金がかかるが、御土産屋の駐車場の場合は無料である。
ただし、とうぜん、観光後、御土産屋へお客は滞在しなければならない。旅行会社にとっては、そこで、お客たちが御土産を購入すれば、そのコミッションが旅行会社へ副収入として入ってくるわけで、二重においしいということになるのかもしれない。

 何十年か前は、このへんの取引きも、人間同士の信頼関係のようなバタ臭い、いや、泥臭さで保っていたと思う。
 それが、どんどんと変わっていったのは、やはり、バブル後あたり1990年代に入ってからではないだろうか?
 近畿日本ツーリスト渋谷(のちのクラブツーリズム)が『びっくり!バス』をヒットさせた頃からではないだろうか?

 当時の多くのお客たちは、旅行会社がほんとうに親切で、御土産屋へ案内してくれていると思っていた気がする。良心的なサービスでおいしいお饅頭なんかを売っているお店に、旅行会社は好意で案内してくれていると思っていたのではないか。だから、お客たちも、そういうお店でよく買物をしてくれていた。

 その後、その御土産屋から入るコミッションを総計したら、バカにならない額だと旅行会社は考えたのだろう。
もっと、効率よくコミッションを取れないかと先ほどあたりの旅行会社が考えたのだろう。もしくは、御土産屋や派遣添乗員が、コミッションをネコババしてやしないかと考えたのかもしれない。

 その当時のコミッションの受取り方は、お客の総売上げの何%ということで、御土産屋が現金でその場で添乗員へ手渡すか、送客書という旅行会社発行の書類に添乗員がサインをしてくるかであった。たまに、バス1台につき・・・千円などと決まった額をくれる御土産屋もあった。
 そういう副収入から「副」を取り払いたい!としたのだろう。

 御土産屋のコミッションを「総売上げの何%」から人頭税のごとくお客ひとりにつきいくらという旅行会社の計算しやすい収入にしてしまった。
 たとえば、あるお店で、お客全員で6万円買物したとする。その10%がコミッションだとすると6千円、もし、誰も何も買わなかったとすれば、そのコミッションは0円だ。それを人頭税方式で、一人頭100円とすると、45名の団体で、つねに、コミッションは100円×45=4500円である。総額10万円買おうと、何も買わなくても、コミッションは4500円である。

 このように、旅行会社がショッピングを副収入から立派な収入と考えるようになると、できるかぎり多くの御土産屋へぶち込む!ほうが得策である。
 
 しかし、そこまでやりはじめると、さすがに人の良いお客たちも、「もういい加減してくれない!」となってくる。
 お土産が売れなくなってくる。
 誰も何も買わない・・・・ということも別にめずらしくなくなってくる。

 御土産屋もこれでは破産してしまうだろう。
 だから、土産屋もいろいろな智恵をしぼりだす。
 土産屋のヨコに工場や農園を併設させてそれを見学することをまるでメインのように装ったり、また、食堂を併設させ、あまり美味しくない格安の郷土料理の昼食を提供し、その食事の前後に買物をさせるようにしたり、また、御土産屋の店員がそこの観光名所のガイドに化けて、観光名所案内の終点は自分のお店ということになっていたり、とどうにかしてお客を引き寄せ購買意欲を高めようと涙ぐましい努力をしていた。
 こういう御土産屋にとっては、団体客が誘致できないということは、命取りである。団体が来るものと想定して最初からお店が成り立っているのである。または、旅行会社により団体客の旨味を静脈注射でもされたかのように団体依存が身体をむしばんでいるのだ。

 だから、こういう御土産屋が、旅行会社へ強く出ることなんてどうみたって不可能だろう。
 そして、旅行会社たちは、御土産屋のことなど、本気で心配などしていない。旅行会社にとって、彼らは、利益をもたらすための道具でしかないのであろう。

 そして、旅行会社たちは、ついに、究極のコミッション集金方法を考え出した。
 それが、「スタンプ」である。
 「スタンプ」とは、旅行会社が発行する自社の金券である。
 金券といっても、コドモ銀行のお札のように、ちゃっちくて、どこかへ持っていけば換金してもらえるという代物でもない。あくまで、旅行会社と御土産屋とのコミッションのやり取りでしか使用されないのだ。

 つまり、御土産屋は、ホンモノの大金を払い前もって、この「スタンプ」と呼ばれる旅行会社のちゃっちいお札を購入しなければならなくなったのだ。
 そして、その旅行会社が御土産屋に立ち寄りコミッションが発生したら、その前もって購入したスタンプをそのコミッションの金額分だけ剥ぎ取って添乗員へ渡すのだ。
 各大手旅行会社に「スタンプ」というのがあるから、御土産屋はそれぞれの旅行会社の発行した「スタンプ」を用意しなければならないということになる。
 
 小物を多く取り扱っている御土産屋は、現金商売である。
 その現金商売の御土産屋へ、前もって自分たちのウワマエを買い取らせている!
 「どっちみち、俺たちの金になるのだから、前もって置いていけ!」といっているように聞こえる。
 まだ、売れてもいない商品のコミッションだけ旅行会社へ持っていかれているようなものではないか!

 わたしは、初めてこの「スタンプ」というのを手にしたとき、「こんなことしていいの?」と本当に思った。
 旅行会社が好意で御土産屋へ案内してくれていると、ほとんどのお客は、もう信じていないとは思うが、ただ、そのことを旅行会社が大きく公表していない以上、添乗員としては、コミッションというものにどことなくネガティブな印象を受けるものだ。だから、土産屋へお客を連れて行くにあたり、添乗員なりの正当な理由を考えようとする。それを、まるで、旅行会社は、航空券や切符の手数料感覚で、コミッションを請求する。しかも、立場的弱者だとみれば、「スタンプ」のような先物を買わせる。

 最近、パックツアーのショッピングでは、誰もが身構えるようになってきた。
 まず、添乗員が、そのネガティブさに身構える。
 御土産屋が、今度こそ買ってもらわなければ!と身構える。
 そして、お客が、押し売りに引っかかるまい!と身構える。


 以前は、お客様を連れてきてくれたお礼の意味をこめて、添乗員に「かまぼこ」を1箱をサービスしてくれた御土産屋が、今はもう何もくれなくなった。
 「・・・・・・・?」
 気配りな御土産屋の営業マンが、わたしの疑問を察して言いにくそうに説明してくれる。

 「・・添乗員さん、ごめんね!おたくの旅行会社のほうから、添乗員へ1箱あげるような余裕かあるなら、その1箱分を旅行会社のコミッションへプラスしろ!といわれちゃったんだ・・・」

 親不孝な仕事をしている添乗員へ家族が唯一、多少の笑顔をみせてくれる瞬間が、この「かまぼこ」の箱をだしたときであった。
 いまは、自分で買わなければならない。
 微々たる自分の日当の何分の一にあたる「かまぼこ」を買うかどうかで日々添乗員は真剣に悩まなければならなくなった。



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