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置き去り

 平成21年9月16日、岐阜地方裁判所で、以下のような判決が言い渡された。

 平成19年6月、ある旅行会社のトルコツアーにひとりで参加したお客様が、出発3日目のトルコのペルガモン遺跡観光中、置き去りにされた事件である。
 添乗員は、現地ガイドとともにお客様を誘導・観光後、パーキングに停車しているバスまで案内した。最後にトイレに立ち寄る客たちの帰りを待って、現地ガイドの「オーケー」というサインとともに、次の観光地へ移動した。
しかし、ひとり参加のお客様が、トイレではなく近くの土産屋に立ち寄ってまだバスまで戻っていなかったことを見逃していたのである。

 自分の乗るべきバスが動き出しビックリしたお客様は、急いで後を追うが、バスはまったく気づかずに走り去っていってしまった。パーキングに止まっていた他の日本人団体のガイド等に、救いの手を願うと、「そのグループなら私たちと同じバス会社だから・・・」と、次の目的地も同じだということで、その別なツアーグループに同乗させていただき、それほど遅れることもなく、大きなトラブルになることもなく、本隊へ復帰することができた。
本隊の添乗員もガイドも、次の観光地で、その一人参加のお客様が別なバスから登場するまで、置き忘れてきたことにまったく気づかなかったようだ。

 帰国後、このお客様は、「多大な精神的苦痛を味わった」ということで、添乗員と旅行会社の責任を問うて、多治見簡易裁判所へ訴え出たのである。
 その決定内容は本文には記載されていないが、旅行会社側の敗訴ということで、旅行会社は、お客様へ損害賠償金の支払いを命じられたようだ。それにたいして、旅行会社が、岐阜地方裁判所に控訴し、それを、岐阜地方裁判所は、控訴を認めず、控訴を棄却し、お客様の全面勝訴が言い渡されたその内容が以下である。

*http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20091224100445.pdf

 これを読むかぎり、置き去りにした責任は、旅行会社の添乗員にある。
 旅行会社の添乗員が、現地ガイドの「オーケー?」という言葉を、人数がそろった、と勘違いしてそのままバスを走らせてしまったようだ。自分自身で人数確認(点呼)をしなかった。
 お客様が怒るのも無理はない。お客様が機転をきかせてくれたおかげで、大きなトラブルにならなくてすんだとも考えられる。
 添乗員(旅行会社)は、お客様に感謝しなくてはならないだろう。

 ただ、添乗員として、こういうトラブルはとてもつらいものがあるのではないだろうか?
 つまり、割合、あることだ!・・・・・・・・
 ツアー中、どうしても気が緩むときがある。これを100%防ぐという約束はなかなか保証できないのではないだろうか。添乗員もわざと置き去りにするわけではないだろう。事後処理を誠意をもって対応したのならば、どうにか許していただきたいと願う。また、ほとんどのお客様は、裁判に訴えるほど大事にすることはない。今回の場合、添乗員は置き去りにされた本人が現われるまで全く気づかなかった!ということが、お客様の保護義務を怠ったということになるようだが、全員がバスに乗っていると思っている添乗員がその時点で気づくことはなかなか無理があるのではないかと思う。

 ここからは、わたしの妄想になるが、このお客様が簡易裁判所に訴えるまでには、それ相当の旅行会社とのトラブルがあったのではないだろうか。
 訴え出るときにかかる費用、またその際の裁判所のほうからの助言を聞けば、訴え出て自分が勝訴しようと、金銭をふくんだ諸々のストレスなどあきらかに自分が損をすることがわかっていたはずだ。
 それなのに、訴えでた。

 どうにかならなかったのかと思う。
 非はあきらかに旅行会社にあるのだから、添乗員なり旅行会社なりの対応如何ではこんな大事に至らならなかったのではないかという気がする。
 もし、お客が多大な賠償請求(本文によると20万円)をしたことが旅行会社として受入れられないことだったのならば、一審の額(15000円?)を受け入れて結審すればよかったのではないかとも思える。なぜ、旅行会社はわざわざ控訴までしたのだろうか?
 そのへんの状況は本文からは何もわからないので、憶測でしかものをいえないのであるが、両者にとって、いいことなど何一つなかった気がしてならない。

 6月のトルコ10日間で約37万円のツアーだ。
 けっこういい値段ではないか?格安ツアーではない。
 この旅行会社はなぜ下記のような内容を主張して、かりにもお客様である相手とやりあったのであろうか?
 旅行会社として恥ずかしくないのだろうか?と疑問が残る叙述も多く見受けられるのだが・・・・
 このような主張を第一種の旅行会社が裁判所でおこなっていいのだろうか?
 指導する立場の日本旅行業協会(JATA)は、まずいのではないだろうか?

抜粋


控訴人=旅行会社
被控訴人=お客様(この旅行の参加者、置き去りにされた)
A=添乗員

・・・・・・・・・・・・・・・・・
(2) 被控訴人は,平成19年6月8日,控訴人との間で,控訴人の主催,計画した「魅惑のトルコ10日間」について,次のとおりの内容の募集型企画旅行契約(以下「本件契約」といい,その目的となる旅行を「本件旅行」という。)を締結した。(甲5,弁論の全趣旨)

ア旅行商品名魅惑のトルコ10日間
イ旅行代金等合計37万5650円
(ア) 旅行代金32万8000円
(イ) 関西空港施設使用料2650円
(ウ) 一人部屋追加代金4万5000円
ウ旅行期間平成19年6月19日~同年6月28日
エ旅行目的国トルコ共和国
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

3 控訴人(旅行会社)の主張
(1) 被控訴人の主張(1)に対する反論等
ア(ア) 控訴人は,本件遺跡観光の途中で参加者らが団体からはぐれてしまうなどの万一の事態に備えて,参加者らに緊急連絡先を記したしおりを配布するなどしてあり,参加者らがそこに連絡をすれば,ベルガマ遺跡周辺にいる,本件旅行における現地手配会社であるB社のガイドやバス運転手ら(以下「B社ガイドら」という。)と連絡を取り合うなどして,発生したトラブルに直ちに対応する体制をとっていた。
本件事故当時,アスクレピオン周辺にはB社ガイドらが複数存在し,アスクレピオンとアクロポリスの間を多く行き来していたのであって,仮に参加者らが専用バスに乗り遅れるような事態が生じたとしても,B社ガイドらが連絡を取り合うなどして,直ちにその参加者らを本件遺跡観光に復帰させることが可能な状態であった。
実際,被控訴人は,他の日本人旅行者の車に同乗してアクロポリスまで来ているが,同旅行者のガイドは,B社に所属しており,同人は,アスクレピオンの売店スタッフから被控訴人が専用バスに乗り遅れた可能性があることを聞き,ツアーが異なるとはいえ同じ会社のお客様であるということで,被控訴人をアクロポリスまで送り届けた。
(後から取って付けたような言い訳に聞こえる。別に不慮の事態にそなえてB社の者をその場に配置していたわけではないだろう。たまたま、別なツアーでその場にいたのだ)

(イ) 上記両見学地間の状況からすると,そもそも添乗員であるAに厳格な人数を確認する義務はなかった。
仮に,Aに人数を確認する義務があったとしても,現地ガイドも控訴人の履行補助者として添乗員の業務の一部を行う立場にあり(本件約款25条1項),本件遺跡観光における見学地間の移動時には,現地ガイドが人数確認をしているから,Aに過失はない。
(この上記の言葉には、驚き!!である。バスで別な場所へ移動するのに、人数確認の義務は必要なし!とのこと!現地ガイドだろうがドライバーだろうが、添乗員付きの場合、旅行会社の付託を受けた主任添乗員に全責任があるのは常識ではないのか!)

イ アスクレピオンとアクロポリスは,ともにベルガマ遺跡内の有名な見学地であり,直線距離にして2キロメートルも離れておらず,加えて,そこには,日本人観光客や日本語の堪能なガイド等も多く存在しており,たとえ参加者らからはぐれて一人アスクレピオンに残されたとしても,独力でアクロポリスに行くことは容易であり,慰謝料を発生させるような精神的損害は発生していない。
そうでないとしても,被控訴人がアスクレピオンで一人になったことによる精神的不安を慰謝するための金額は5000円を上回るものではなく,控訴人は,本件旅行後,被控訴人に対し,5000円分の金券を交付しており,被控訴人に生じた精神的不安はすべて慰謝されている。
(精神的損害はない?確かに後から調べれば、それほどリスクの少ない「置き去り」だったかもしれない。ただ、一人参加のお客様が知らない外国で置き去りにされた際の旅行会社の認識がこれでいいのかと思ってしまう)

ウ 過失相殺
被控訴人は,本件遺跡観光において団体行動が強く求められている上に,Aから,売店等には立ち寄らず,専用バスへと戻るようにとの指示及び注意が与えられていたにもかかわらず,これを無視して誰にも告げることなく売店に立ち寄り買い物に興じていたため,専用バスに乗り遅れたものである。
また,被控訴人は,添乗員からパスポートや緊急連絡先を記したしおり等を携帯するようにとの指示があったにもかかわらず,これを無視してこれらを携帯していなかった。
以上,被控訴人には,本件事故の発生につき過失があるほか,その損害の発生についても過失がある。
(このような状況は旅行中よくあることだろう。何名かがトイレへいき、何名かはバスのほうへ移動する。添乗員が厳密に指示する場面ではないだろう。ただ、添乗員が勝手に全員が乗車したという思い込みをしただけで、その責任転嫁のために、お客様にも過失があった!のだとこじつけたように感じる)

第3 当裁判所の判断
1 被控訴人の主張(1)アについて
(1) 証拠(乙4,7,8)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
ア 本件遺跡観光のうちアスクレピオン観光は,現地ガイドが先頭に立ち,参加者らは,これに続く形で現地ガイドの説明を聞きながら付いて歩くという方法で行われた。このとき,Aは参加者らの後方から付いて歩いた。
イ 現地ガイドは,参加者らに対して,アスクレピオン観光の終了にあたり,専用バスに向かうという説明をし,Aはこれを補足する形で,現地ガイドに付いて専用バスに戻るよう指示をし,観光時と同様,現地ガイドが先頭,Aが後方という形で,参加者らは一団となって歩いて専用バスに向かった。
ウ Aは,アスクレピオンの出口付近で,トイレに寄りたいという参加者ら数名をアスクレピオンの出口付近のトイレに案内するため,参加者らの一団を専用バスに向かわせたまま,参加者らの一団から離れた。
エ アスクレピオン観光中及び観光終了後バス出発までの時間は,自由行動時間ではなく,参加者らは自由行動を取ることは認められていなかったが,被控訴人は,Aの指示に反して参加者らの列から離れ,Aや現地ガイドの許可を得ることなく,勝手に土産物屋で買い物をした。
オ Aは,トイレに寄った参加者ら数名を連れてバスに乗り込むと,現地ガイドから「オーケー」という声を掛けられ,すでに人数確認が済んで,参加者らが全員そろっていると思いこみ,専用バスをアクロポリスへと発車させた。
カ 被控訴人が買い物を終え,専用バスに向かって歩き出したところ,専用バスが動き出した。被控訴人は,専用バスが引き返すことを期待して10分程度その場で待機した後,別の日本人旅行者の車に同乗し,被控訴人を除く参加者らより3分ほど遅れてアクロポリスに到着した。
キ Aは,被控訴人がアクロポリスに到着するまで本件事故につき気づかなかったため,全く何らの対応もしなかった。
ク アスクレピオンとアクロポリスは,車でも20分,徒歩であれば1ないし2時間程度かかる距離にある。
ケ アスクレピオン周辺には日本語が通じる者が少なかった。一方,被控訴人は,本件事故当時,片言の英語を除き外国語に通じておらず,トルコ語は全く理解していなかった。
コ 被控訴人は,本件事故当時,わずかなトルコリラ,クレジットカード及びデジタルカメラしか所持していなかった。

(2) ところで,添乗員は,旅行業務取扱主任者又は旅程管理主任者の資格をもって業として団体旅行に付き添う者であり,社会通念上,旅行者の生命,身体,財産等の安全を確保するため,旅行日程中,その契約内容の実施に関
して遭遇する危険を排除すべく合理的な措置をとるべき義務があるというべきである。
本件において,上記(1)の認定事実によれば,添乗員であるAは,専用バスでアスクレピオンを出発してアクロポリスに向かうにあたり,旅行者である参加者らの身体,生命の安全を確保するため,参加者ら全員が専用バスに乗り込んだか否かを点呼するなどして自ら確認するか,これらの作業を現地ガイドに行わせる場合には,その旨を確認をすべき義務があったというべきところ,Aは,専用バスに乗り込んだ際,現地ガイドがAに対し,「オーケー」と声を掛けたことを,勝手に,現地ガイドが参加者らの人数を確認し,全員がそろっているという意味だと思いこみ,漫然とこれらを行わず,そのため,被控訴人がバスに乗り込むまで待機したり,周囲を捜索するなど,被控訴人に対して何ら保護,救援活動を行わず,本件事故が発生したことが認められるから,控訴人は,被控訴人に対し,民法715条に基づく損害賠償義務があるというべきである。
この点,控訴人は,控訴人の主張(1)アのとおり主張し,確かに,証拠(乙10)及び弁論の全趣旨によれば,控訴人は,本件遺跡観光の途中で参加者らが団体からはぐれてしまうなどの万一の事態に備えて,参加者ら全員に緊急連絡先を記したしおりを配布するなどしてあり,参加者らがそこに連絡をすれば,ベルガマ遺跡に多数存在するB社ガイドらが連絡を取り合うなどして,発生したトラブルに直ちに対応する体制をとっていたこと,アスクレピオンとアクロポリスはベルガマ遺跡内における2つの見学地であり,本件事故当時,アスクレピオン周辺にはB社ガイドらが複数存在し,両見学地間を多く行き来していたのであって,仮に参加者らがアスクレピオンからアクロポリスに移動する際に専用バスに乗り遅れるような事態が生じたとしても,B社ガイドらが連絡を取り合うなどして,直ちにその参加者を本件遺跡観光に復帰させることが可能な状態であったことは認められる。しかし,上記(1)ケ及び同コの認定事実のとおり,アスクレピオン周辺には日本語が通じる者が少なかったこと,被控訴人は,本件事故当時,片言の英語を除き外国語に通じておらず,トルコ語は全く理解していなかったこと,被控訴人は,本件事故当時,わずかなトルコリラ,クレジットカード及びデジタルカメラしか所持していなかったことからすると,上記事情をもって,Aに上記注意義務がなかったとまでは解されず,控訴人の同主張は採用できない。

2 被控訴人の主張(1)イについて
控訴人が,本件旅行後,被控訴人に対し,5000円分の商品券を交付したこと(争いがない事実),上記1(1),(2)の認定事実及び本件に現れた一切の事情を考慮すると,慰謝料は3万円とするのが相当である。

3 控訴人の主張(1)ウについて
(1) 上記1(1)の認定事実によれば,Aは,アスクレピオン観光を終えた時点で参加者らに対し,現地ガイドに付いて専用バスに戻るよう口頭で指示をしていたこと,本件旅行では,自由行動時間を除いて参加者らが団体で行動す
ることが予定されており,アスクレピオン観光では自由行動時間はなかったことが認められ,参加者らは,アスクレピオン観光中及び観光終了後専用バスに乗車するまで,個人行動を慎む義務があったと認められる
それにもかかわらず,被控訴人は,Aの指示に反して参加者らの列から離れ,Aや現地ガイドの許可を得ることなく,勝手に土産物屋で買い物をし,そのために,本件事故が発生したと認められるから,被控訴人にも,本件事故の発生につき過失があるということができる。
(2) Aが,本件事故前に被控訴人に対し,貴重品や緊急連絡先を記したしおりを携帯するよう指示したことを認めるに足りる証拠はない。
(3) Aの過失と被控訴人の上記(1)の過失を対比すると,原告の損害額から5割を減額するのが相当である。
したがって,控訴人が被控訴人に対して賠償すべき損害額は1万5000円となる。
(過失相殺が認められた。添乗員にとっては、自分の過失がそもそも原因なトラブルでもお客の過失責任と認定してもらえるのならばこんなに楽なことはないだろう。ただ、お客の身になってみれば、こんなことで、過失相殺などといわれたらたまったものではないだろう。5割の責任!このお客は、バスの見える位置で買物していたと考えられるので、トイレ~バスのルート上ではないのか?このような行動を「個人行動を慎む義務」とまで言われてしまっては、お客はいつもピリピリ、ドキドキと、軍隊のように指揮官である添乗員に一言一句従わなければならなくなってしまうのではないか?疲れてボーッとして、添乗員の言葉を聞き漏らしたら大変なことになってしまう。・・・・はたしてそんな旅が楽しいのだろうか?)

4 結論
以上によれば,被控訴人の使用者責任に基づく損害賠償請求は,1万5000円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成19年8月7日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるからこれを認容し,その余は棄却すべきである。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




ビデオは上記ツアーとは逆回り(アクロポリス~アスクレピオン)。結構な距離である。

 ただひとつ、ハッキリしていることは、この募集型企画ツアーの添乗員が、派遣会社の添乗員であれば、間違いなく、その損害賠償金額の負担をしいられていたことだろう。
 社員であれば、旅行会社が負担するはずだ。
 責任を感じる添乗員であれば、自ら支払おうとするのかもしれない。


 
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