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酒井順子さんの言うサービス


以前、私が大好きなエッセイストの酒井順子さんが週刊現代にコラムを連載していた。その1話で、サービスについて、とてもおもしろいストーリーを紹介している。




連載エッセイ第179回『その人、独身』
“サービスブーム”を支える人々

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・従業員さん全体が醸し出す「サービス、しますよ!」みたいな気概が、ちょっと息のつまる暑苦しさにつながっているのだと思うのですが。
 その手の旅館に一歩入るとチェックインの係の人からお掃除係の人に至るまで、客は笑顔と敬語の洪水に呑まれることになります。笑顔は別に嫌ではないのですが、ある種の宗教団体の人に会っている時のようなというか、ディズニーランドの「イッツ・ア・スモールワールド」の中にいる時のようなというか、その手の「不愉快ではないが落ち着かない」気分になってくる。
 なぜそのような気分になるかといえば、私が既に、「人生、笑顔ばかりじゃやっていけないですよね」ということを知っているからなのでしょう。だからこそ、従業員さん達の笑顔は、教育と鍛錬によるものだろうなぁと、夢の無いことを思ってしまう。
 どうやら最近、「サービス」というものがブームのような気がするのです。日本ではもともと、たとえば日本航空の客室乗務員が客にひざまずいてサービスするといった、ゲイシャ系サービスが盛んな国ではありました。が、ただかしずくだけのサービスというのか、今ではもう時代遅れになり、サービスは新たなステージに。
 旅館で言うならば、客が旅館に着いた時と帰る時だけ、女将を筆頭に仲居さん達がずらりと並んで土下座する、みたいなサービスは、既に無駄なものとなっています。初対面の人達に土下座されても客としては何らグッとこないし、その手の仲居さんというのはたいてい、土下座が終ると能面顔でスタスタ歩いていったものでした。
 観光業界における競争が激化している、今。旅館においても生き残りをかけて、「常に笑顔で真心サービス」みたいな教育が徹底されているのでしょう。ちょっと恐そうな女将がビシッと教育しているのだと思うと、「勤務終了後のストレスは、さぞや・・・・」と、つい私などは思ってしまう。しかし日本人は真面目なので、笑えと言われれば、頑張って笑うのです。
 また昨今は、「一歩先を行ってお客さまのニーズを摑む」といった、読心術みたいなサービスも、ブームです。「伝説のサービスマン」とか「名女将」とか「有名ホテルのカリスマコンシェルジュ」といった人達が書いたハウツー本も、いっぱい出ている様子。
 読心術系サービスというのは、「お客さまが薬の袋を取り出してら、言われる前にさっと氷の入っていない水をサーブする」
 みたいなことです。子供連れの客が来たら、やはり言われる前に子供用の椅子をセットするとか、メニューには載っていない子供用料理を提案する、みたいなことでもありましょう。
 サービスブームというのは、日本人の職人魂をいたく刺激したようです。「常に笑顔で」と教育された旅館の人達は、ほとんど泣き顔に近い笑顔を見せ続けてくれる。そして「一歩先を読むサービス」に目覚めてしまった人は、薬の袋を取り出してしまった人に、氷抜きの水を出すだけでなく、風邪に効くハーブティーまで出したりするようになった。
 一歩先読み系のサービスを心がけるサービスマン達は、今やほとんどサービスおたくと化しています。どれだけ先の先を読めるか。
どれだけ客の顔と名前と誕生日と結婚記念日を覚えられるか。どれだけ客の期待に応えかつ意外性も感じさせワインをサーブできるか。・・・・を、競い合っている。
 が、どうも客の側が鼻白むのは、そこに「してやったり感」のようなものが見てとれる瞬間があるからなのでした。薬袋を取り出した客に水とハーブティーを持ってくるのはいいのだけれど、
「風邪に効くハーブティーでございます」
と言うサービスマンの顔には、
「どう?俺って気が効くでしょう?」と書いてある、ことがある。
「わぁ嬉しい、どうして風邪気味だってわかったんですか?」
 という客からの称賛を期待する空気が、ムンムンと漂ってくるのです。
 また、薬袋を取り出したからといって、その人は風邪とは限りません。その薬は降圧剤かもしれないし痔の薬かもしれないのであって、一歩先を行くサービスが空回りする可能性も、大。
昨今のサービスブームに乗るサービスおたく達からは、「自分も伝説のサービスマンになって、一発当ててやる」みたいな生臭い感じが漂ってきます。その手の人達からいちいち名前で呼び掛けられたり、誕生日を覚えていられたりするのも良し悪しであって、
「お願いだから放っておいて~」
 と頼みたくなることも、ある。
 日本人にとって、適当なサービス。それは、アメリカのように、誰もが弾けるような笑顔全開、というものではないと思うのです。かといって裏の裏を読むような諜報合戦をされるのも、面倒臭い。
「必要なものがあったら自分で言いますから、そんなに探らないでいいです~」
 と、「サービスしてやるぞー」という気合い満々のサービスマン達の前に出ると、言いたくなってしまうのでした。
 一歩も先に行かなくていいので、半歩くらい先を。そして、サービスをしたのかしていないのかわからないくらいそっけなく、むしろ恥ずかしい気にサービスをして下さったりするとホッとするのが、日本人なのではないか。サービスの輸入もいいですが、現代日本人の国民性に合ったサービスを、サービスおたくの人達には考えてほしいものだと思います。



酒井さんのいうことは、同じサービス業として旅行業にも言えることではないだろうか。特に、添乗員としてお客様と接するとき、必要以上のサービス・・「サービス、しますよ!」風な添乗員も多いのではないだろうか。そこには、旅行会社の恐そうな管理教育の影が相手に気付かれてしまっていたり、「どう?私が添乗員で良かったでしょ!」的な客からの称賛を期待する空気がムンムンと漂っていたり、しているのではないだろうか。

このような、旅行会社からの指示でおこなっている過剰なサービスや自分のポイントを上げるための自己満足的なサービスは、お客のために本当になるのだろうか。
確かに、マトリョーシカのように次から次へと出てくるサービス、読心術のような先読みサービスにお客は歓喜し、絶賛するだろう。逆に、酒井さんみたいに「必要なものがあったら自分で言いますから、そんなに探らないでいいです!」的な考えが少数派だろう。
旅行会社は、歓喜し絶賛したお客が必ず同じ旅行会社に申し込むと信じている。そして、確かにお客は再びこの旅行会社に申し込むのである。

このようなツアー客というのは、はじめての旅行がこのパックツアーであることが多い。卵から孵って最初に見たのがパックツアーであった。次もパックツアー、そしてその次もパックツアーである。ママがパンツもパジャマも着せてくれるのが当たり前として育ったこの手のお客は、しだいに、まるでサービスを審査するために、ツアーに参加している風になってくる。前回の添乗員や旅行会社と比べて、他のお客に今回の告げ口(悪口)をしたりする輩も出てくる。自分の失敗や過失も当然、ママ(添乗員)のせいにする。大きなことを言うわりには、他の旅行会社のツアーに参加する勇気もない。だから、また、同じツアーに参加してくる。

これら本当の愛情を知らずに育ったお客に本当の愛情を教えるのは容易ではないだろうが、旅行会社、添乗員が真摯に客の気持ちを考えたなら、お客は過保護から脱皮する喜びを味わえると思う。
海外で自分の足で立って殻を破って新しい空気に触れてみる!若者から年長者までこの喜びは同じである。

この喜びを味わえたなら、酒井順子さんの価値観も共有できるはずだ。
添乗員は、サービスをしない勇気も大切だと思う。

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