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マジックバス 2

マジックバス1
『スパニッシュ・キャラバンを捜して』中上健次(新潮社)1986より

ペシャワールはしかしながら、私のドジにもかかわらず、気品をたたえた古い徳という印象がある。
 乗客らがバザールに出かけ、私はテレビクルーに連れられて、ペシャワールからすぐのカイバル峠に向った。
パキスタン国営放送の局員が案内役をしてくれる。
 ペシャワールにもカイバル峠近辺にも、隣の国アフガニスタンから難民がなだれ込み、この近辺が拠点になって、難民の中からゲリラがアフガニスタンに進撃してゆくと聞いた。
かつて、マジックバスはインドから、パキスタンのこのペシャワールに出、カイバル峠を抜けてアフガニスタンに入るというルートだったが、ソヴィエトのかいらい政権が誕生し、ソヴィエト軍が介在して、ゲリラ活動が活発になってルートを大幅に変更したとも聞いた。



 岩肌がむき出し、草木も生えていない荒涼たる砂漠地帯である。
 カイバル峠から国境を見た。
 不思議なところだと思った。
 この近辺が日本人には一等不思議で面白い。というのも、日本では考えられない事だが、アフガニスタン、パキスタンの間を出たり入ったりしているゲリラの行動に、政府は関与しないし、附与できない。
 アフガン難民はさながら、移動する国家のようなイメージなのである。
 カイバル峠の小さなバザールに行って、私は手製のジャックナイフと、日本で密売すれば、数百万はもうかると思われる蚊取り線香のような形にしたハシシを十ルピーで買った。つまりここは昔からシルクロードとしてそうであったように、ハシシだけでなく、コケインやヘロインの交通の拠点でもある、と知れた。
 今、ゲリラの拠点となっているペシャワールが、昔、物語市場と呼ばれたのも、何やら面白い。
カイバル峠もペシャワールも、シンドバッドが登場する物語に似合いそうな夢幻的なところだが、それにきなくさい武闘の匂いが混るのである。何やら血湧き肉躍る。


 
ペシャワールを出て、バスが走りはじめて、バスの窓から羊を連れたジプシーの一行が歩いていくのを見た。   
 遊牧するジプシー。ここでも私は眼を洗われる気がした。
 随分前にスペインのセビリアで、定住しているジプシーの部落に取材に行った事があったが、番号のついた国提供の施設に住んでいるジプシーらは妙に張りがなく、水が悪いのか、何人もがトラコーマにかかり、眼をこすって傷をつけ、カメラを向けても涙をポロポロ流して眼をあけていられない状態だった。ここでは昂然と胸を張って生きている。物々交扱をしているのだろうか?
 車が川の側に停った。運転手らがバスを洗い始めた。
 風呂に入っていない乗客らは川の水で体を洗いはじめた。
 丁度そこに、先はど追い越したジプシーの一行が来た。
 乗客らが声を出して洗っている川を、浅瀬を選んで羊の群が渡りはじめる。
 水を怖れた羊は川を避けて、崖っぷちをのぽってゆき、逆に降りられなくなる。ラクダが浅瀬を渡るのをいやがってしゃがみ込んでしまった。ジプシーの女がかんしゃくを起して思いっきり、ラクダの顔をぶった。
 ラクダが悲鳴を上げた。立て、歩け、ジプシーの女はひもを引いた。
 ラクダはよろよろと立ちあがる。
 ラクダの背の上の荷物の一等上に足をくくりつけられた数羽のニワトリ、ラクダの動きにあわせて、平衡をとろうとするようにバタバタ羽根をひろげる。
 テレビが乗客ばかりを写していた。
 私はそれに気づいて無性に腹立ち、「あれを撮れ」とどなった。
 どなってみて、せんない事だと気づいたのである。




*マジックバス つづく




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