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添乗員の待遇改善の欺瞞

「添乗員の過酷な労働環境」
2006年、
派遣会社「旅行綜研」の添乗員が東部労組に加入し、添乗員の待遇に関して労働基準監督署に訴え出てから、この
問題が多少、新聞などでも取り上げられるようになった。
 
 その後、阪急交通社の派遣会社「阪急トラベルサポート」の添乗員数名が東部労組に加入し、待遇改善を求めて動き出した。
その勇気ある行動は、多くの賛同者を添乗員や旅行関係者の中からも呼んだ。
労働基準監督署は、添乗員側を支持し、派遣会社や旅行会社に是正勧告をおこなった。
政府の委員会でも、取り上げられた。
もう誤魔化すことができなくなった派遣会社、旅行会社、JATA(日本旅行業協会)、ANTA、TCSA(日本添乗サービス協会)、厚生労働省、国土交通省は、それぞれ責任をなすりつけあい、この問題に取り組んでいるようなパフォーマンスをし出した。
派遣添乗員は、労働者としての最低限の保証を主張しただけなのである。
年間、200万前後しかもらえない給料をもう少し上げてくれ!といっただけである。
ここから、所得税と引かれて、自分で、健康保険費、国民年金を支払ったら、生きていけないから、どうにかしてくれ!といっただけである。
別に新人の給料ではない。ベテランでもほとんど変わらないのだ!
日雇い派遣が問題化する以前の話しなのだ。

ここ1年ぐらいの間、かつて無いほど、NHKやマスコミに大きく取り上げられた。
しかし、どこも解決のためのパフォーマンスだけ一生懸命で、本気で取り組む雰囲気はない。
ほとぼりが冷めて、何もなかったように、前の状態に戻るのを待っているだけに見える。


わたしから言わせれば、ヤッパリ、だ!ということだ。
旅行会社は、もともと添乗員の待遇を進展させるつもりなど毛頭ない!
そんな気持ちが多少でもあれば、もうとっくにこの問題は解決していたのだ。


派遣添乗員が生まれて、30年以上になるだろう。
その間、添乗員の待遇はずっと悪かったのだ。
そんなに悪かったのなら、公共機関に訴えるとか、なぜしてこなかったの?とよく言う人がいるが、訴え出た人は過去に何人もいるのだ。
また、派遣会社に対して、当時の労働省や運輸省に対して、JATAやTCSAに対して、何人もの添乗員が「このままでは生活できない!」と申し出ているのだ。
そのたびに、どの機関も、〈わかりました〉という風に、「今、がんばっていますから、もう少し、お待ちください」とパフォーマンスする。
派遣添乗員は、それぞれが登録という形態で、個人店主のように働いており、まとまりにくいのだ。
なかなか一致団結とまではならないので、そうこうしているうちに、1本のろうそくの火は、1本のまま消えていってしまうのだ(つまり、どうにもならなくなり、転職するのである。転職したら、もう門外漢となる)。
また、添乗員の中にも、コバンザメのごとく、大勢にゴマをすって、自分だけ優遇してもらおうとヌケガケする輩も多い。

そして、どの機関も、添乗員の待遇改善の行動を実際には何も起こさずに、そのまま、30年過ぎてきたのだ。
それは、旅行会社が右肩上がり成長しているときも然りである。
あのバブルの時期でも然りである!
ましてや、これから、成長が見込まれないこの時期に、添乗員の待遇改善など本気で取り組むような集団ではない!はずだ。
また、どうにか、パフォーマンスで乗り切ろうと考えているはずだ!

詐欺師は、何度捕まっても、また詐欺をする。
それと同じである。


わたしが、ある大手旅行会社の役員の方と話したとき、
その役員は、「ほんとうに、いい添乗員が少なくなった」という。
「いい添乗員とは、どんな添乗員ですか」
「それは、こちらの希望に応えられる添乗員だね」
「でも、そんな添乗員が必要なら、それなりに待遇をよくしないと来ませんよ。特に、お金をもっと出さないと来ないんじゃないでしょうか」
「それだけは、絶対できないんだ!」
「それなら、、無理でしょう!逆に、もっと、悪くなるだけですよ!」

 彼ら(旅行会社)には、添乗員という仕事を一つの職業として、尊重しようという発想は元々ない。
特に、小中学校の修学旅行からスタートしたような大手旅行会社社員にとって、添乗員とは、何でも屋の雑用係である。いつでも、土下座ができ、駅停車中にヤカンを持って給水ができ、顧客のためなら深夜までお酒の注げる兵士でなければならない。
この発想からは、派遣添乗員のような『歩兵』にお金をなぜ支払うんだ!ということになる。
だから、当初から、旅行会社社員の添乗出張手当分と派遣添乗員の給料が同じ程であった。
つまり、自分たちにとって、とても嫌な仕事である添乗を、出張手当分で頼めるのなら、それにこしたことはないという発想である。
これなら、ツアーの売上げとは、まったく関係ない。自分たちが添乗しても、支払われる手当分が、派遣添乗員に移動するだけである。はっきりいえば、彼らにとっては、ただで、派遣添乗員を使役したのと同じである。

このような旅行会社が、びた一文!添乗員の待遇改善のために、出すはずはないではないか!
良心的な派遣会社が、旅行会社に対して、どれだけベースアップを頼もうが、ほとんどの旅行会社がそれに応じようとはしなかったのではないか!
逆に、飼い犬に噛まれたように、怒って契約破棄を通告したりしたのではないか!

ここ2年ほど、派遣添乗員の虐待問題が大きくマスコミにも取り上げられるようになって、旅行会社の印象はかなり悪くなった。
その印象を変えるためだろう、残業代などの待遇改善を試みるパフォーマンスに精を出している。
しかし、その内容はお粗末で、改善には程遠いものだ。
彼らが、本心から、添乗員給料の構造を改善する意思はないのだ。

*サービス連合(旅行会社の労働組合)
この労働組合のすばらしいパフォーマンス!を紹介しよう。
この組合のHPより添乗員対策のレポートを読むと、偽善だらけである。

たとえば、「みなし労働」について、

1、一部労働基準監督署の指摘によりますと、添乗員の添乗労働時間の管理が可能な理由として、旅行の日程表による時刻記載と添乗日報による実時間報告の存在を挙げています。
しかしながら、日程表は旅行参加客のあくまで行動予定を記載したものであり、添乗員の添乗労働は旅程開始前及び添乗中も日程表に記載のある時間通りに労働している訳ではありません。例えば、運輸機関による移動時間中は、運行は運転士、サービスはガイド・車掌・乗務員などが行っており、添乗員の行う業務は、乗り込んだ際の人員の確認と今後の旅程の案内、到着間際の到着後の案内など、ごく限られた時間の労働を行っているのみです。旅行という商品の性質上、業務遂行のために運輸機関による移動が必要であり場所的な拘束を受けておりますが、移動時間の全てを労働時間(手待ち時間を含む)と捉えることは、添乗業務の実態とは乖離しています。

政府や旅行業界は、サービス連合から、労働者の代表も交えて、「添乗員労働問題研究会」、「添乗員問題検討部会」を立ち上げ、添乗員問題の問題提起をおこなったらしい。
しかし、ふざけるな!!!!と言いたい。
本当の添乗員であれば、このような発想は絶対しない!
(なぜなら、このような発想をしたら、もうその時点で添乗はできないからだ)
何が労働者の代表も交えて、立ち上げた団体なのか!!!
こんな、偽善ばかり何十年すれば、気がすむのか!
(消防士は、みなし労働なのか?火を消しているときの給料しかもらっていないのか?)
*サービス連合の業界、行政への取組み

*No.15 (2008.06.17) 派遣添乗員の処遇改善に関する統一対応(案)を決定(ページ下)
サービス連合の具体的な策定

Ⅱ.添乗業務検討委員会の議論経過
1.「添乗中の労働時間管理と日当の関係について」
添乗中の労働時間管理については、実時間管理が基本という考えを否定するつもりはありませんが、業務内容の明確化や労働時間の把握が極めて難しいなどの諸課題を総合的に判断した結果、一部みなし労働時間を適用することが相当であるとの結論に至りました。
みなし時間は、8時間や所定労働時間ではなく、標準旅行業約款で定めた業務提供時間やTCSA の調査、実態として多いということから12 時間を基本とすることとしました。
従来より、派遣添乗員の対価は、一般事務派遣と比較して明らかに低水準であり、日当の改善は不可欠です。そこで、現行日当を8時間で割り基本時間給を算出し、3時間分を加算させ底上げをはかるとの結論に至りました。
また、12 時間を超過した部分については、別途、時間外労働手当もしくは日当を支給することで、添乗中の長時間労働抑制や処遇改善を行っていくこととしました。


2.「派遣添乗員の業務の明確化」
委員会では、派遣添乗員の業務について、派遣添乗員ネットワークや派遣添乗員の加盟組合からの実態報告、旅行業法及び労働者派遣法から以下のとおり整理をしました。
旅程管理業務を本来業務、旅程管理に付随する業務を付随業務とし、それ以外をその他の業務としました。付随業務やその他の業務については、付加手当の支給や業務そのものを行わないようにすることや、旅行会社社員の派遣添乗員への理解が十分ではないことが議論されました。

取り組み基準
1.日当改善
【基本方針】
・時間給換算にあたっては、現行の日当を8時間で割り基本時間給を算出する。但し、本人手取り時給額が1000 円を下回らないこととする。
・1日の労働時間は、12 時間のみなし労働とし、その内訳は、基本労働時間を8時間、時間外労働3時間、休憩時間1時間とする。
・日当金額の決定は、基本時間給×8時間、基本時間給×時間外労働割増(25%)×3 時間、よって基本時間給を11.75 倍とすることを基本とする。
・12 時間を超えた労働については、別途、規定の率を乗じ、時間外労働手当もしくは日当の支給を求めることとする。

【統一基準】
・すべての派遣添乗員を対象に、本人手取り日当の下限を以下の通り改定する。
(1000 円×8 時間)+(1000 円×1.25×3 時間)=11,750 円

・時間給換算で1000 円の確保ができない場合については、本人手取りが産業別最低保障賃金を下回らないこととします。産業別最低保障賃金の適用都道府県は、登録する派遣元事業所とする。
※なお、添乗員のランクで上位に位置づけられているものについても基本時間給換算により日当を決定することとし、可能な限り上積みを図ることとする。

2.業務改善
① 労働基準法で定められた休憩時間を添乗中に確保するため、パンフレットへの記載や事前の顧客への案内などに関する改善要請を行うこととします。
② 打合せ・精算・対客電話については別途日当を支給することとする。
③ 対客電話については、実施する連絡時間帯や連絡の取れない場合の対応など詳細を定め顧客に明示するよう要請を行うこととします。
④ 顧客及び派遣添乗員の個人情報漏洩の防止措置を講じることとします。
⑤ その他の付随業務については、対価の支給をするか、業務に従事させないなどの改善要請を行うこととします。
⑥ 通信費や交通費など業務に関わる経費負担を、派遣添乗員個人が負わないよう派遣会社と協力し徹底するよう要請を行うこととします。
⑦ 派遣添乗員の長時間労働を是正するための措置を要請することとします。
⑧ 労働者派遣法に基づく基本精神の遵守徹底を要請することとします


上記のような日当が下限らしいが、ほとんどの旅行会社の現実的対応は、下記のようである。


*添乗員の驚くべき労働時間
早朝・深夜の申告は、添乗コースの中日で、
早朝4:59以前および深夜22:01以降に就労した場合申告可。
但し、日本発着(ツアー初日・現地出発日など)は適用外。

適用条件例:早朝4:59以前のホテル出発時間(5:00発は不可)
深夜22:01以降のホテル到着(22:00着は不可)
宿泊ホテルでの夕食はスタートから一時間後の終了とみなす。
お客様の怪我・病気等のイレギュラー対応は、対応開始・終了時間が起算となる。



サービス連合の指針では、
8時から20時までを、みなし労働の日当分と考え、その最低日当が、11,750円である。
しかし、現実の改善策?では、5時から22時までがみなし労働日当分で、最低日当の11,750円を超えない者が多数を占める。
もしかしたら、この11,750円というのは、旅行会社が派遣会社へ払う日当のことなのか!?
また、残業部分についても、ホテルの部屋で明日の日程の下調べをしたり、色々思考、思案する時間は含まれないらしい。(そこが、ツアー管理上、一番大事なのだが)
だから、実際ヨーロッパのレギュラーコースでも、残業時間は、数時間つくかどうかである。

旅行会社にとって、添乗員は飼い犬であって、奴隷であった。
だから、今回の騒動で、「真摯に受け止め、今まで失礼なことをしました」という姿勢どころか、「よくも、かわいがって使ってやってやったのに、噛み付くようなマネをしてくれたな」
と、「お前たちが、みなし労働反対!だとか細かいことをいうんだったら、俺たちも相当のことをしてやる」という風な態度に出た。
添乗員にストレスが強く発生するようなマニュアルの厳格化と責任の押付けをしたり、アンケート査定を強固にしたりと、嫌がらせではないのかと思う事柄が多い。

もともと、派遣添乗員の待遇をよくするということは、サービス連合の旅行会社組合員からすれば、自分たちの待遇が悪くなることを意味する。
下降線の不景気の中で、ただでさえ、安い給料しかもらっていない旅行会社の社員にとって、利益を派遣に分配するということは、ワークシェアリングができるかどうか?ということである。

アメリカの医療改革がなかなか前進しないのは、奴隷であった黒人らと医療をシェアリングするのが嫌だからではないのか?白人たちの税金が貧しい黒人たちに使われることが嫌だからではないのか?
旅行会社にとって、添乗員は奴隷であった・・・・・・・・


パッケージツアーの旅行代金は、90年代以降ずっと下落傾向にある。
つまり、価格がどんどん安くなっているのだ。
別に、物価が下がっていたわけではない。
価格を下げた分、集客しなければ、売上げは上がらないだろう。
旅行会社からすれば、何本もツアーを催行し、それぞれ1本1本のツアーが30人も40人も集まればいいということになる。
しかし、派遣添乗員の人件費は、1本ずつの売上げの中で算出されるのであるから、格安ツアーの薄利多売の中では、一向に低額に抑えられたままなのである。逆に、人数が増えたり、金のかからないサービスの提供者として、あれもやれ!これもやれ!となって、人権侵害の温床となっていった。

そうして、2000年代の「儲かった者の価値観やモラルは正しい!」という市場原理主義の嵐のなかで、 阪急交通社『トラピックス』、JTB『旅物語』、クラブツーリズムなどに代表される格安ツアーは、我が物顔で振舞った。
「あまりに酷い!」といえば、所詮お前らは「負け組」なんだ、という風に。


そして今、その取扱高に関しても、危険信号が出されている。
*主要旅行会社、6月の海外旅行取扱額は43.9%減、パッケージ商品は39.0%減(トラベル・ビジョン)

販売額が高かったのは阪急交通社の166億5318万1000円(前年比:31.6%減)、エイチ・アイ・エスの145億4597万9000円(同:33.0%減)、JTBワールドバケーションズの96億9080万2000円(同:44.7%減)と続く。また縮小幅が少なかったのは、クラブツーリズムの26.5%減(取扱額:31億3766万3000円)、南海国際旅行の28.2%減(同:2億3743万1000円)、西鉄旅行の29.1%減(14億6871万6000円)であった。募集型企画旅行に限ると、取扱額は39.0%減の352億3061万9000円で、取扱人数は27.3%減の21万2672人となった。

なお、1月から6月の上半期累計では、海外旅行は26.0%減の1兆495億8694万4000円、国内旅行は12.0%減の1兆9399億5259万4000円、外国人旅行は19.0%減の338億702万5000円。海外旅行ではエイチ・アイ・エスが9.0%減(取扱額:1230億6712万7000円)、ユナイテッドツアーズが9.4%減(同:100億7726万6000円)でマイナス幅が1ケタ減であったものの、そのほかは2ケタ減。海外旅行取扱額、総取扱額ともに前年を上回った旅行会社はなかった。



こんな中で、旅行会社が派遣添乗員の待遇改善に本気で取り組もうとするだろうか?
また、のらり、くらり、とやり過ごされて終わりになるのではないか。
私は、心のどこかに、
もう、派遣会社は必要ない!
旅行会社も必要ない!
という気持ちがある・・・・・・



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