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日本人って・・・金子光晴より

詩人・金子光晴は、第二次世界大戦の前に、2度ヨーロッパを旅した。
それ以外に、アジアも旅した。

そして、戦争に反対した。
日本が負けることはわかっていた。
反戦詩を書き、文学者が戦争に協力することに反対した。
小林秀雄は、戦争から逃げ、久米正雄は、戦争に協力した。
しかし、金子は、久米さんがいたおかげで、文学者がそんなに酷い目にあわずにすんだ、
と久米が文学者と政府との間をうまく立ち回ってくれたことに感謝している。


日本人はなぜ戦争したのか?
金子は考え、日本という島国に江戸時代から息づく日本人の偏狭な自意識に対して疑問を呈する。

それは、戦後60年以上たった今でも、息づいているのではないだろうか。
外国に出た日本人は、日本大使と大使夫人を家長として、肩を寄せ合って、今でも、家族(コミュニティ)を形成しているのである。



(『絶望の精神史』金子光晴著より)

・・・・・ながい鎖国のための、外づらの悪さから、外国人と対等に解け合うことができず、日本から離れれば離れるほど、日本人どうしの結びつきが強くなり、距離に比例して、心は逆に、日本へ近づくのである。
だから、日本人は外国にいるときほど、純粋に日本人であることはなく、そのときほど、あのみじめな島国をいとおしみ、愛しているときはないのである。
 僕は、このはじめてのヨーロッパの船旅のなかで、大正の文化人とは違ったむかしのままの人情風俗に出会って、まだそっくり、明治の日本人と、その考えが生きているのを知って、おもいを新たにした。
彼らは、暇さえあれば議論する。日本総領事館が外国官憲に対して弱腰なことや、東洋からイギリス、オランダをたたき出さねばならないというのは、まだいいとして、「そのために日本は大戦争を、近い将来に用意している。それはたしかな筋からきいたのだ」と一人が言えば、「華僑の排日は、もう一度戦争で手ひどい目にあわさなければ、いつまでたってもいやまない。まずチャンコロをやっつけるのが先だ」と一人は極論する。
 どれも一皮むいてみれば、自分の現実の立場を擁護してほしいということに帰結するのだが、外交や、民族の融和ではなくて、国の暴力一つをたよっているのである。
その原因は、彼らをそそのかし、軍事力によって国の発展を約束した明治の軍国主義を、世間知らずの正直な日本国民が、まるのみにしたことによるのだ。

 突っ立った岩や、ねそべった岩が、まわりの海を拒絶し、はねつけている。海は見わたすかぎり凪ぎわたっているが、日本から外へ出ようとするものの意志をはばみ、また、破壊や混乱や、過剰な刺激を外から運んでくる、外国の船舶の近寄るのを警戒していた。
 そのために、長い年月日本人は、海のかなたに、国々のあることを忘れていた。忘れていないまでも、無関心でいた。拓本や薬、文房具などを日本へ運ぶ朝鮮や、中国をのぞいたら、ほかの土地は蛮族の住家だとおもいこまされていた。
「民をして知らしむべからず」の政策の、それも一つのあらわれである。
江戸時代は、この政策で、三百年の平安の夢を見たが、日本人の性格はそのためゆがめられた。
「見ざる。聞かざる。言わざる」の消極的な小天地のなかで、よそへは通用しない、横柄で小心、悟りすましているようで勘定高い、ちぐはぐな性格ができあがった。
性格ばかりでなく、すわりつづけてばかりいるので、胴長で、足のまがった、奇型な体質までつくりあげた。
 今日の日本人のなかにも、まだ残っている、あきらめの早い、あなたまかせの性質や、「長いものには巻かれろ」という考えからくる、看板の塗替えの早さ、さらには、節操を口にしながら、実利的で、口と心のうらはらなところなどは、江戸から東京への変革のあいだを生き抜けてきた人びとの、絶望の根深さから体得した知恵の深さと言っていいものだろうか。
 日本人として生まれてきたことは、はたして、祝福してよいだろうか。
 悲運なことなのだとうか。
その答えは、だれにもできないことであろう。

しかし、僕が、防波堤や、虫食った岩礁の上に立って、黒潮の渦巻くのを眺めながら、「とうてい、逃げられない」と感じたことは、日本がむかしのまま鎖国状態とあまり変わりがないことへの絶望とみて、まちがいはないだろう。
 警備がどれほど厳重であっても、たとえば、東ドイツと西ドイツのような石壁があっても、それを越えられるという可能性さえあれば、僕らは、自分のおもうとおりを自分に命令する勇気がもてる。
国境が地面で続いていたら、その先が砂漠であっても、よろめき出た歩数だけの自由を自分のものにすることができるのに。




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