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アングロサクソンの食事


食がわかれば世界経済がわかる (文春文庫)食がわかれば世界経済がわかる (文春文庫)
(2008/06/10)
榊原 英資

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アングロサクソンの功罪

・・・・・・アングロサクソンに特徴的なことは、物事をシステムとして捉えて効率的に支配する能力に長けていることではないでしょうか。植民地支配、プランテーション経営を最も効率的かつ狡猾に成功させたのは英国です。金融と近代資本主義のシステムを確立したのも彼らですし、産業革命によって大量生産システムを確立すると、その物量をもって市場を押さえ、戦争でも物量で敵を圧倒しました。しかし、英米とも製造業では後発国に品質で追い越され、最近では世界最大の自動車メーカーのGMまでもが、省燃費技術の立ち遅れ等でトヨタのプリウスなどにシェアを奪われ、急速に弱体化しています。
 こうした製造業の危機に対して、アメリカは思い切った産業構造の転換をはかっているようです。それは、ヘゲモン(覇権国)として、資本主義のシステムやルールを自国に有利な方向に変更し、モノづくりでは劣勢になっても金融の力で利益が上がるようにするというものでした。ニクソンショック、プラザ合意、金融ビッグバン、BIS規制による世界的な金融ルールの変更やIT技術を駆使した金融の技術革新などです。世界経済の仕組みそのものを自国に有利なシステムにパラダイムシフトする構想力には、抜きん出たものがあります。また自国のシステムをグローバルスタンダードに仕立てあげ他国に輸出する政治力も強烈です。

 しかし、そうしたシステマチックな手法を「食」の分野にまで持ち込んできたことで、世界中に大きな問題を引き起こしています。それがファストフードです。
一九世紀から二〇世紀にかけての「食」のエポックの一つをフランス料理の完成とすれば、もう一つのエポックはアメリカによるファストフードの展開と言えるでしょう。
 大恐慌後の一九三〇年代に入ると、自動車産業のフォードなど製造業で本格的な大量生産の技術が生み出され、工業製品の価格低下と普及が急速に進みます。機械製品の大衆化をきっかけに世界は本格的な工業化時代に入り、その中でトップを切ったことで、二〇世紀の後半、第二次大戦以降は「アメリカの時代」になっていきました。
 この二〇世妃後半になると、「食」の面でもアメリカが次々にイノベーションを行って、世界の食文化を変えてゆきます。とりわけ工業における大量生産の手法を農業と食品にも持ち込み、それによって生まれた食文化がファストフードです。
「ケンクッキーフライドチキン」の創業者、カーネル・サンダースが自分の店「サンダース・カフェ」を開業したのが一九三〇年。お金をとってレシピを広め始めたのが一九五〇年代初めのこと。
 ほぼ同じ一九四八年にはマクドナルド兄弟が、カリフォルニア州に開いたドライブインを改装して、現在につながる「マックバーガー」を始めます。
一方、飲物版のファストフードとも言うべき「コカ・コーラ」はかなり早く、一八八六年にはジョージア州のアトランタで創業しています。
 アメリカは基本的に食肉文化ですけれども、ステーキは庶民にとっては高いから、大量生産のハンバーガーが広まりました。それがマクドナルドです。アメリカが世界経済の主導権をとると、食の世界もファストフードが主流の時代になって、マクドナルドやケンクッキーフライドチキンといったファストフード産業が世界に進出してゆきます。
 ハンバーガーに代表されるファストフード、大衆向けの人工飲料であるコカ・コーラなどをつくり出し、原材料となる肉牛やブロイラーなどの家畜の大量生産の仕組みを作り、スーパーマーケット、コンビニエンスストアという大量販売の小売の仕組みを作ったのもアメリカです。




 アメリカは、アングロサクソン主導でつくられた国といっても、世界中から多くの移民を受け入れているわけだから、もう少し食事が美味しくてもいいと思うが、どこで食べてもあまり旨くはない。どこの移民もアメリカへ来ると味覚を気にしなくなるのかもしれない。
 家庭料理も、レストランも、至って大雑把な味だ。ちょっと町で評判のレストランで、自信満々の笑顔で運ばれてきた料理はそう美味しいものでもない。
 ファストフードのように手っ取り早いとか、紅花オブトーキョーのようにシェフがかわったパフォーマンスをするとか、お鮨のようにヘルシーとか、味そのものに価値など見出さないのがアメリカなのだろう。

 異文化交流ということで、日本からアメリカへホームスティへいく。
 ホストファミリーは、博愛的スマイルで、われわれを家族の一員に迎えてくれる。
 ただ、食事はけっこう苦痛だったりする。
 小中学校時代の学校給食のほうが美味しいのではないか?

 






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